2008年09月06日
トリーター:伊藤

バッタバタと登場

川魚のジャンプ水槽の隣にある小さな水槽では、深海生物展に合わせてウナギが展示されていましたが、本日より新展示となりました。
季節限定、「秋の虫」です。
水族館で昆虫?と思うなかれ、水と関わりの深い生物を「水族」とするならば、彼らは紛れもない「水族」です。

展示の主役は、私が相模川沿いの草地などで採集してきたバッタたち(バッタ目:コオロギやキリギリスも含む)です。
川の近くは増水や人の農業活動のために地盤が攪拌されるため、木があまり育たず、ススキやヨシなどの草地となりますし、水田は人工的なイネの草地ですから、そこは草を食べるバッタの楽園となります。
これから秋の間、展示していく予定です。

まずはおなじみ?オンブバッタ。
名前はよく知られますが、よくよく見れば変わった性質の持ち主です。
有名なオンブ行動は一般的には交尾のためですが、本種はそれ以外のときもオンブしっぱなしで、その間背中のオスは餌も食べません。
背中には立派な羽があるのに、飛べない個体がほとんど・・・ なのに道路に囲まれた空き地などにも現れます。
さらに他のバッタと食べ物の好みも違い、イネ科植物はあまり食べないようです。
現地では、水辺の植物コナギを食べていました(他にはヨモギやクズなど)。
体の色は緑色タイプと茶色タイプがいます。

次にショウリョウバッタ。
とんがった頭の巨大なメスは迫力満点で、スターティングメンバーの中では一番目立つ存在です。
キチキチ音を立ててよく飛びますが、着地の瞬間を狙えば素手でも捕まえられます。
ちなみに江の島の頂上付近の草地にもたくさんいました。
これら水辺のバッタたち、あやまって水に落ちても器用に水を蹴ってスイスイと岸まで泳いでしまいます。
生きた昆虫を展示する場合、動きが少ない、すぐに隠れてしまうといった問題がありますが、彼らは目の前で堂々と、ばりばり草を食べてくれます。
また、その姿に嫌悪感を示す方も少ないようですし(ゴキやハチはいくら面白い生態でも、お見せしづらいです)、実はとても展示向きな奴らなのでは?と思えてきます。
私は常々、そこら辺では生きた状態で見れない生物をお見せしたいと思っています。
一つは珍しい生物(例えばダイオウグソクムシやマツダイ、シイラなど)ですが、もう一つはあまりに身近過ぎて見落としている生物です。
バッタはまさに後者だと思います。
私も久々の虫取りで彼らに再会し、その魅力的な姿と行動を思い出させてもらいました。
みなさんもバッタの魅力を感じていただけたら幸いです。

とても多食いな彼らは、与えた餌の葉っぱも 1~ 2日で平らげて茎だけにしてくれるので、これからしばらくは、バッタのための草取りが私の日課になりそうです。

休耕田でコナギを食べるオンブバッタ休耕田でコナギを食べるオンブバッタ2色のショウリョウバッタ2色のショウリョウバッタ

相模湾ゾーン

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