2008年11月18日
トリーター:植田

冬が近づけば

そろそろ各地から木枯らしの便りが聞かれ、本州の平野部でも雪が舞うこともあるというような予報が報じられます。
日本のように四季が明瞭にあり、雪が積もったり、氷がはるような寒い冬を持つ地域の陸上の生き物たちは、いわゆる冬越しのため、いろいろな備えをするようです。

一方水の世界に住む生き物はどうでしょうか。
遊泳性に富む海生哺乳類のクジラたちや爬虫類のウミガメなどは、夏場と冬場で居場所を大きく変えて、自分たちの生活サイクルに見合った海域でそれぞれの季節を過ごすようです。

一方移動能力を殆んど持ち合わせない沿岸域の無脊椎動物たちでは、寒い冬をじっと耐えて春まで待つというのが大方かもしれません。
冬場に海岸に出かけて磯の生き物を観察すると、どの生き物も動きが鈍かったり、夏には見つかったのに、冬には姿が見えなくなったりしています。

当館の相模の海ゾーンに、江の島岩礁水槽があります。
ここの展示の主役は、江の島の磯場に茂るアラメやカジメといった大型の褐藻類です。
彼らは水温が低下する冬場から春先にかけて、水温の変化を感じ取って生長します。
そのため、この水槽は他の水槽であまり行わない水温の季節的な変化を積極的に取り入れています。
具体的には、夏場 20℃を越えるぐらいの水温で過ごさせ、秋になると徐々に下げて、冬場には 13℃程度まで冷たい環境をわざと作っています。
それで海藻たちがしっかりと葉を伸ばす刺激にするわけです。
しかしこのような冬場の寒さを好まない生き物もいます。
例えば、カラフルな模様のニシキベラ。
彼らは 13℃という温度が苦手なようで、それくらいに冷えてくると、岩陰に隠れて全く泳ぎまわろうとはしなくなります。
注意深く観察していただくと、案外水族館の中にも季節があることに気づいていただけるでしょう。

ニシキベラニシキベラ

相模湾ゾーン

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