2009年04月01日
トリーター:寺沢

がんばれニッポン

右にするか左にするか、上か下か、一瞬迷い神に祈る。

日本は前半、再三シュートを放つも、バーレーンの高さに攻めあぐね、0-0で折り返し。
しかし後半 2分、敵陣エリア手前中央のフリーキック(FK)を中村(俊)選手が遠藤選手に小さく出し、遠藤選手が止めたボールを中村(俊)選手が左足で振り抜いた。
ジャンプした相手DFの頭に当たったボールが、軌道を変えゴール右隅のネットを揺らした。


3月28日の対バーレーン戦。この FKの 1点を守り抜き、勝ち点 3。この日試合のなかった勝ち点 10のオーストラリアを抜いて、日本がサッカーW杯アジア最終予選 A組の首位に躍り出た。

サッカーの FKとイルカの採血、どこか似ている。

イルカの採血はほとんどの場合、尾びれからおこなう。
トレーナーがサインを出し、水面で腹を上にして尾びれを軽く抑え体を静止させた状態で、針を刺す。
基本的にイルカを捕まえていないので、針を刺した瞬間に暴れたり、アルコール綿で尾びれに触れただけで動き出したりすることもある。

雨の日も風の日も、時には凍える手に白い息を吹きかけ、あるときには額に汗して、ひと気のないスタンドで、黙々と FKの練習を繰り返すように、楊枝棒を針にみたてて、朝に夕にとイルカの採血も日々の努力を怠らない。

岡田ジャパンが一蹴入魂、サムライジャパンが一球入魂。それなら、私は一針入魂か。

尾びれ尾びれ


勝ち点3
採血成功。イルカが微動だにせず、完璧だった時には、サンバのリズムがこだまし、頭の中ではカズダンス。
得点になる FKは軌道が見えるという。採血でもそのイルカの血管の走行がはっきりと見える瞬間があると、勝ち点3だ。
見た目より、右であったり、左であったり、血管の走行にも個性がある。
一回の採取量は 10~12mlとして、ヒトの検査と同様、白血球数、赤血球数、GOT、GPTなど、およそ 50項目を調べている。妊娠判定も血液検査からおこなう。

勝ち点1
かすり。業界用語(江の島限定)。
血管をかすり、ゆっくりと血液があがってきて、途中でイルカが動き始め採血を中止した場合、イルカが暴れた時などもこれに分類される。
いずれにしても、採血量が不足すると検査結果も不十分となって、イルカの状態を評価する上で、やはり、かすりはかすりでしかない。
ゴールポストやクロスバーをかすったボールは、ゴールするか、弾き出される。ここが、イルカの採血とは少し違う。

勝ち点0
採血失敗。わずか針一本分外れていても、血管を捉えているが針の向き、角度によっては、血液は採れない。
餌の影響を考え、採血は朝一番に行なっていることもあるが、そんな日は一日がやたらと長く感じる。
FKを外した本人が「ドンマイ、ドンマイ」と言っている輩を目にするが、血管を外し採血が失敗した時、私はいつも思うことがある、水族館の壁になって消えてしまいたい、と。

水族館の壁水族館の壁

イルカショースタジアム

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