2010年03月29日
トリーター:石川

経験よりも可能性


先日のトリーター日誌でも先輩トリーターよりお伝えしていましたが、3月20日にフンボルトペンギンの「ハク♀」と「ジャンボ♂」の第一卵が、3月24日に「ポー♂」と「ウタ♀」の第一卵がそれぞれふ化しました。
どちらのヒナも今のところ順調なようです。
みなさんには伝わりにくいのですが、ペンギンプール内ではそれぞれのヒナが餌をねだる際に鳴く声が結構大きく聞こえ、その元気さを感じます。

前回の「コハク」から 2年のブランク、私個人でいえば実に 2001年 12月の「チョキ(黄色タグ)」以来 9年ぶりの育雛体験です。過去に携わった育雛ペアは 4ペアで、この時の経験をもとに今回もチャレンジしています。

しかし今回の 2羽は、初めから過去の経験値だけでは対応させてくれないのです。
まず、卵の重さですが、今までは 120gというのがふ化に至るか否かの境目として大まかですが基準にしていました。
この理由としては、今まで 120gをきって育ったペンギンは当館では 1羽のみだったからです。
今回ふ化した卵の産卵時の重さは、どちらも 119g。
この時点でおおきな不安を抱いていました。

しかし、ふ化してみるとヒナの体重は、
「ハク」のヒナ 80g
「ウタ」のヒナ 83.2g
アダルトのオスのペンギンで「トップ」というのがいるのですがこの「トップ」がふ化した時の体重は 79g。これから比べれば、かなり大きいということになります。

また、フンボルトペンギンは普通 1~ 3日おいて計 2つの卵を産みますが、卵を採っていくと、3~ 4個まで産卵することもあります。
一腹(ひとはら)で産卵された卵は順に小さく(軽く)なっていきます。逆をいえば一卵目が一番重いということになります。
ところが今回産卵された一卵目はどちらも二卵目より小さかったのです(「ハク」第二卵 123g、「ウタ」第二卵 127g)。

卵が産卵されてから 10日~ 15日目で検卵(ライトで卵をすかしてみて中で発生しているかを確認する)をして発生を調べます。「ウタ」の第二卵目の発生は認められませんでした。ほかの 3個は発生しているようでした。

以上を総合的に判断すると、この中でふ化して育っていく可能性の高い卵は、「ハク」の第二卵だけとなります。
しかし結果は双方とも第一卵がふ化し、第二卵はふ化に至らなかったのです。

飼育をしていてうまくいかない領域が広がることは好ましくありませんが、今回のように良い方向で領域が広がるのは嬉しいことです。
これからもどんどん期待を裏切って成長してもらいたいものです。

また、今回、「ハク」と「ジャンボ」の巣はみなさまがのぞけるくらい近い距離に設けています。まだ雛が小さいので安心はできませんが、みなさんといっしょに雛の成長や親たちの子煩悩さを見ていきたいと思います。

ポーとウタポーとウタ

ペンギン・アザラシ

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