2010年04月21日
トリーター:石川

十企鵝十色


ペンギンというと群れているイメージを思い浮かべる人も多いかと思いますが、群れをつくる生き物は比較的その 1羽1羽、1匹1匹の個性までなかなかクローズアップされないことが多いと思います。
しかし実際には 1個体、1ペア、1家族、1家系それぞれに結構個性があるようです。
そして子育てやペアの結びつきについては日々良い関係、良い環境を構築するべく学習、模索しているように感じます。

ヒナを育てている時期は、こういった行動が顕著に観察できる良い機会でもあります。

ヒナに餌を与える時は親が一度食べた餌を吐き戻して与えるのですが、小さいうちはまだヒナが消化されていない餌を食べられないので、親がある程度消化したものを与えます。
小さければ小さいほどその消化の状態をコントロールしなければならず、ふ化直後は雌がこの役を重荷になっていることが多いようです。
しかし雄もヒナが生まれると居てもたっても居られない状態のようで、隙があれば雌の変わりに入ってヒナに餌を与えたい心境に駆られているようです。

ペンギンプールに向かって右側に、育雛(子育て)に専念できるように分けて飼育している「ハク♀」と「ジャンボ♂」のペアの「ジャンボ」は、ヒナが小さくても大きくてもほとんど消化されていない餌を与えてしまい、巣の中が吐き戻しの魚で汚れてしまうといったことが過去に見られていました。
実はこの「ジャンボ」の父親であるⅠ青というペンギンも同じでした。
ひょっとしたらそんなことに影響を受けているのかもしれないと何となく思いながら、そんな状況でも♀の「ハク」が献身的にヒナへ餌を与えることで、今までに 2羽のヒナを育て上げています。

しかし今回は今までの経験を踏まえてでしょうか、「ジャンボ」も初めから子育てに加わり、なおかつ、子どものサイズに合わせて、消化状態もコントロールできているようです。
周囲に吐き戻した残魚もほとんど見当たりません。
どちらかというと♀の「ハク」より子育てに加わっている時間が長いようにも思います。

一方別のペア、「ポー♂」と「ウタ♀」では、「ポー」は過去に子育ての経験がありますが、「ウタ」は初めてです。
初めての「ウタ」としてはとてもよくやっていますが、通常ヒナを育てている時期はどちらかの親が必ず巣に居るものです。
ヒナが小さい時は体温調整もうまくできないのでなおさらです。
給餌のときも、ヒナを抱いている親は相方が餌を食べて戻ってくるまで待っているものです。
しかしこの「ウタ」は、お腹がすいたヒナに餌を要求されると、ヒナを置いて出てきてしまうことがあります。
お構いなしの「ウタ」に対して、「ポー」は連携がうまくいっていないもどかしさに駆られながら給餌もそこそこに巣へ戻っていくのです。
そんな「ポー」がかわいそうなので、後で巣にいる「ポー」には餌を与えるのですが、何となく「ポー」にエールを送ってしまうのです。
オスたちの奮闘している状況もそれぞれですね。

時間があればじっくりとペンギン家族のようすを観察してみてください。

ウタとポーウタとポー

ペンギン・アザラシ

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