2010年04月24日
トリーター:伊藤

まだ見ぬ相模湾


4月23日から、当館の前半部「相模湾コーナー」のリニューアルがなされました。
これからちょくちょく見どころを紹介していきます。

巨大なタカアシガニがいるひとつ前、オレンジ光の小水槽は、私が展示を作りました。
テーマは「まだ見ぬ相模湾の深海」です。

水族館に勤めてからしばらく相模湾コーナーを担当した私ですが、その後数年間は深海コーナーの担当をしていました。
古巣に戻ってきたのは今年の 2月です。
4年前、当時深海コーナーの担当をしていた現・北里大学講師の三宅さんに誘われ、初めてJAMSTEC調査船で相模湾の深海に触れました。
その後、自分も担当となって全部で 9回、深海調査に同行しました。うち、相模湾は 4回にのぼります。
今回はこれまで自ら見てきた深海の体験を生かして、「深海と沿岸とのつなぎ」としての展示を目指しました。
相模湾の大陸棚から最深部にかけては泥底以外に、ごつごつとした岩が点々とした転石地帯や、高さ数mの小高い台地のような地形があります。
高台の上に泥が少しだけ積もり、二枚貝がひな壇に置いてあるような場所もありました。
相模湾には沖ノ山堆と呼ばれる場所があります。
船の往来が激しく、初島沖などと比べて、調査は進んでいないようですが、水深 150mから 1300mまでの斜面にはガケや岩の突出し、転石が多く、湧き出しもあるといいます。
あんなチムニーまであるかどうか分かりませんが・・・ありえる範囲で想像力を働かせて展示を作ってみました。
また、私が実際に見てきた三陸の日本海溝では、海溝に差しかかると断崖絶壁であると同時に、立体的な岩(オーバーハングや台地状など)に泥砂が積もる場所が点々とあり、そんな場所を潜っていきました。
あそこで見た風景も、今回の展示のイメージに添えています。

生き物としては、これまで当館の深海コーナーではあまり光の当たらなかった脇役たちの魅力再考を目指しました。
その一つがウナギです。
ウナギを展示している水族館は数あれど、深海魚と一緒に展示することはあまりありません。
フィリピン沖で生まれたウナギの仔魚は、海流に乗って相模湾までやってきます。
湘南海岸のシラスウナギ漁は冬の風物詩です。その漁を逃れ?川や沿岸で成魚に成長したウナギは、再び相模湾を通って産卵に向かいます。
ウナギが深海に潜っていくところは誰も見たことがなく、こちらも私の想像の世界です。
また、海水で飼育したウナギは卵や精子の発達が促進され、外見も海仕様(銀色っぽい?)になるという噂もあります。
あまり目立ちませんが、わくわくしながら観察を続けたいと思います。

ちょっと大げさ?湧き出し岩。さて材料は・・・ちょっと大げさ?湧き出し岩。さて材料は・・・ありふれた川魚であり珍しい深海魚ありふれた川魚であり珍しい深海魚バックヤードで手塩にかけたまん丸「チゴダラ」バックヤードで手塩にかけたまん丸「チゴダラ」

相模湾ゾーン

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