2010年07月17日
トリーター:根本

深海コーナーの白い宝石「シロウリガイ」


みなさん、シロウリガイという二枚貝を知っていますか?
世界でも珍しい生物を数多く飼育する深海コーナーの中でも、とりわけ珍しい生物、その一つがシロウリガイなのです。

採集はJAMSTECの潜水船「しんかい6500」や無人探査機「ハイパードルフィン」でおこなうのですが、この超ハイテク潜水機器を持ってすれば採集自体は比較的容易です。
しかし、水槽の中で生きないのです・・・。

この貝は相模湾の深海底に体の半分以上を埋もれさせて暮らし、海底からしみ出す硫化水素という毒ガスを餌にして生きています。
この過激なライフスタイルが、飼育するうえで大きな壁となって我々の前に立ちはだかっているのです。

過去何度となくトライしました。しかし未だに良い飼育方法が見つかりません。
水槽に入れた直後はものすごく調子が良いんです。
水管をビューン!と出し絶好調といった感じです。
しかし、数日立つと突然殻の中に閉じこもり、さらに数日立つと赤い血を吐いて死んでしまうのです。
原因は全然わかりません。
圧力?
採集時のダメージ?
水槽の硫化水素濃度不足?
謎です。

しかし、一回だけ長期間の飼育に成功したことがあります。
それまでは長くて 1週間ほどでしたが、その時は 2か月も飼育することに成功しました!
それが 2007年です。その後 2008年、2009年と同じ方法で飼育したのですが、どれもダメでした。
同時に違う方法も試したのですが、それらはさらに短命に終わりました。

そして 2010年。採集された個体が少なかったので、成績の良い 2007年方式で飼育しているのですが、今年はなぜか調子がいいんです!
7月18日で飼育期間 2か月を迎えました。
船上での水温管理に気をくばったのが効いているのでしょうか!うれしい限りです!

現在深海コーナー一番大きな水槽「化学合成生態系水槽」の向かって右端の泥の中で貝殻に混じって埋まって生きています。
たった 1個体ではありますが、彼は生まれ育った海底から約 80気圧も水圧が低いこの水槽( 1気圧)の中で頑張って生きてくれています。
白くてとっても地味な貝ですが、来館された際には彼の頑張りを見てあげてください。
ただ、とっても見辛い位置にいるうえ、時々移動するので見つけるのはちょっと難しいかもいれません・・・。
5mmから 1cmくらい泥から殻の先っちょを出して、赤い水管を出しているので探してみてくださいね!

目指せ 3か月!頑張れシロウリガイ!

シロウリガイ (C)JAMSTECシロウリガイ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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