2010年08月08日
トリーター:伊藤

渚の憧れプレデター


現在開催中のテーマ水槽「海の周りで昆虫採集?」では、主に相模湾沿いの海辺で採集した昆虫を展示しています。
そんな中で唯一、自家採集ではない昆虫がいます。
その名を「オオヒョウタンゴミムシ」といいます。
神奈川県では未だ記録がない昆虫です。
自然度の高い砂浜と海浜植物群落が残る環境でしか見られず、これらの環境が激減した現在では全国的に数を減らし、環境省レッドデータブックの準絶滅危惧種となっており、生息県の多くで絶滅危惧種か絶滅種になってしまっています。

この昆虫の入手は思いがけない人の縁でかないました。
今年の春に全国の水族館職員が集う研究会で、海浜昆虫好きの飼育係、越前松島水族館の百崎さんと知り合ったのです。
百崎さんは、最近私が海のマニアックな昆虫を集めていると知り、知り合いの方にオオヒョウタンゴミムシの採集を頼んでくださったのでした。
採集頂いたのは島根大学の松田さんです。
松田さんは海辺のガを研究されていて、その採集の折にオオヒョウタンゴミムシを採集くださり、私の元へ届けてくださいました。
御二方にはこの場で改めて心よりお礼申し上げます。

届いた箱を開け、生まれて初めてオオヒョウタンゴミムシを見た時の感動は久々の感覚、そう、まさに幼少のころ、ザルを使ってやっとの思いでハンミョウをつかまえた時の、炎天下の遊園地で初めてトノサマバッタをつかまえた時の、あの感覚でした。
純真さを失っていなかったことにちょっと安心したのもつかの間、次なる不安がもたげます。
オオヒョウタンは半砂中生活者です。普通に展示したのでは砂に潜ってしまい、巣の入り口しかご覧頂けません。
ここ数日ほどはアリの展示を参考にプラケース前面に巣を作らせようとしましたが難しかったので、作戦変更し、砂を薄くひいた水槽にローテーションで登場してもらうことにしました。
今のところ、全部隠れてしまうことはなく、間近でご覧頂けます。
また、併設したモニターでも本種の大アップの映像をご覧頂けます。

本種の生きた状態はめったに見られるものではありませんよ。ぜひご覧ください。

関連日誌
[ 海浜昆虫の観察と採集日誌 ]

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