2010年08月17日
トリーター:植田

幻の魚「アオギス」のこと


きょうはあまり脚光の浴びることのない展示魚についてお話したいと思います。
相模湾と海続きの東京湾は、遠浅で海岸近くには大小の干潟が形成されていました。このような砂泥底の干潟環境に好んで生息する魚にアオギスがいます。
特に河口干潟に多く、時期によっては一部河川に遡上してくるともいわれます。

昭和の中期、30年代まではこのアオギスを釣るための独特の釣り方法である「脚立釣り」が東京湾の海岸の季節の風物誌とされました。
しかし高度経済成長に合わせ、東京湾沿岸の埋め立てや人工護岸化が進み、生息場所である干潟がどんどん消失していくにつれ、アオギスの姿もどんどん見られなくなりました。

また周辺の陸地から大量に流れ込む工業廃水、生活排水などによる水域の汚染も原因となり、現在ではアオギスは東京湾から多分絶滅したと考えられています。
この種類は干潟にすむ割には清浄な水を好むこと、神経質な性格なども絶滅に結びつく要因となったのかもしれません。

現在当館では(財)海洋生物環境研究所が研究材料として人工繁殖させた若魚を貰い受け、体長 15cmほどに成長したもの 5尾をアマモ場水槽に出して展示をしています。
相模湾ではアオギス生息の確かな記録はありませんが、海続きの東京湾には昭和の中ごろまで確かに生息していた希少な海水魚として来館者のみなさまに紹介しています。

アオギスアオギス

相模湾ゾーン

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