2010年09月07日
トリーター:唐亀

パラサイト・なう


クマノミとイソギンチャク。ホンソメワケベラとクエ。
「共生」とよばれる生き物の関わりあいです。
一般に仲が良い組み合わせとされています。
他にも片方には利益があるが、もう片方にはメリットが無い「片利共生」というものもあります。
ガンガゼに身を隠すヒカリイシモチやタカアシガニの体表に付いているエボシガイなどがそうでしょうか。
一方的に利益を得て、相手には百害あって一利なしという場合は「寄生」ということになるようですが、片利共生と寄生の線引きはとても難しいですね。
図鑑などで「共生」と紹介されているものでも、これは寄生じゃないか?というものも多々あります。

水族館で問題になる寄生生物は、宿主を病気にしてしまうようなものたちです。
本来、寄生生物の多くはとりつく相手が決まっています。
特に体内に寄生するタイプはシビアなようです。
有名なアニサキスは、魚の体内を乗り継いで、最終的には鯨類の胃壁に落ち着くのですが、たまたま私たちの体内に入り込むと、落ち着く場所を探して(無いのですが)動き回ります。
その時、腸壁やらなんやらに穴を開けて移動するために私たちに苦痛をもたらします。
本来、寄生された宿主は影響が無いものです。寄生生物とて、宿主を食い潰してしまっては自分の命が失われてしまうからです。
時折、宿主の体調が悪くなったり、水槽内という自然と異なる環境では、許容範囲以上に寄生してしまい、宿主を弱らせることがありますが、こうなるともう病気扱いになります。
魚類ですと、ベネデニア、ペンネラ(イカリムシ)、ウオジラミ、チョウなどがあります。
魚病としてポピュラーな白点病も、菌が原因ではなく、白点虫が表皮に寄生する寄生虫症の一つです。
特にこの白点病は水槽内では砂糖をまぶしたようになってしまうこともありますが、自然下でそんな状態になる事はまずありません。狭い水槽の中では、特定の宿主に集中的に寄生してしまうために酷い状態になってしまうのでしょう。

さて、長々と書いてまいりましたが、本来、水族館などでは「共生」は見せても、「寄生」をあからさまにお見せすることはほとんどありません。
しかし、今月のテーマ水槽「国際生物多様性年~可笑しくも地球のなかまたち~」では、あえて寄生生物を展示しております。
今月の裏テーマは「へんないきもの」。
「地球の生き物は必要の無いものは何一ついない」ということで、へんないきものを集めました。
ここにいるのは「フクロムシ」。
みなさんも、もしかしたら見たことがあるかもしれません。
ただ、ほとんどの場合、卵を抱いていると勘違いしていると思いますが・・・。

フクロムシはカニの腹の部分に生殖部位が露出しています。ここが袋状になっているのでフクロムシと名前がつきました。
ここは卵と精子をつくります(雌雄同体です)。
この見えているところは一部分で、腹の所からカニの体内に木の根のように体を張り巡らし、まさに木の根のようにそこから養分を吸収して生きています。
フクロムシのすごいところは、寄生されたカニをコントロールするのです。
カニは卵を守るようにフクロムシの面倒を見ます。
オスに寄生した場合、宿主をメスのように変化させてしまいます。
生殖能力は無くなり、長生きするようになりますが、これはフクロムシが長く生きられるということなのです。
こんなフクロムシは実は「フジツボ」の仲間なんです。

カニに寄生したフクロムシカニに寄生したフクロムシ

テーマ水槽

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