2011年01月23日
トリーター:根本

深海の天使


真冬の天使が深海コーナーに舞い降りました。
そう、この時期になると北極海から流氷といっしょにやってくる彼ら?いや彼女らか・・・?
とにかくやってくる天使のクリオネさんです(ちなみに雌雄同体だそうです)。
英語でもSea Angel(海の天使)、学名でもClione limacina (ナメクジのような女神様)と美しい生物と思われているようですね。ナメクジという辺りが科学者としての葛藤が見えるような気がします。
「かわいいから女神という属名をつけたけれど学名だしなぁ、形態的な特徴も入れなきゃなぁ・・・
うーん仕方ない!ナメクジに似てるからナメクジも入れておこう。これでバランス取れたかな?」
といった感じで・・・(あくまで私の勝手な空想ですよ。真実は記載論文に書いてあるはず)。
クリオネは巻貝の仲間なので、同じ巻貝のナメクジと同じ仲間といえます。そこらも考慮してのことなのでしょうか。

和名はハダカカメガイ。
殻を持たないカメガイの仲間でハダカカメガイ。解りやすいですね。
でも個人的には学名みたいな名前の方が好きです。

貝は素敵な名前が付けられることが多いようです。
テンシノツバサガイはその名の通り、開くと天使の翼のような形になります。いい名前ですね。
クマサカガイは他の貝の貝殻を自分にくっ付けて成長することから、平安時代の大泥棒熊坂長範からきているそうです。素敵です。
そして深海の熱水噴出息に棲むヨモツヘグイニナは「黄泉の国でかまどの飯を食う貝」という意味だそうです。ハイセンスですね。

さてさて、深海コーナーで展示しているのには理由があります。
それはズバリ深海でも見られるからです。深海リーダーの北田トリーターがそう申しておりました。
私は生きているのは見たことありませんが、カメガイの仲間の殻は深海調査でよく見かけます。
深海で生物を採集したときに、一緒に取れた海底の砂の中にカメガイの殻が入っているのです。
結構多いんですよ。最初見たときはカメガイの殻とは知らず「陸から植物の種が流れてきて深海に落ちたのかな?」とか思ったものでした・・・。
クリオネは痕跡が残らないので解りませんが、カメガイの仲間は深海にもいるということですね。

ハダカカメガイハダカカメガイ

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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