2011年04月03日
トリーター:唐亀

飼育の日の飼育の話の話


まず始めに、東日本大震災で被災した方々、そして、大切な人が被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。

毎月変わるテーマ水槽の変更も、停電対応などで後手後手になってしまってハラハラしましたが、なんとか月が開け、オープンすることができました。

今月のテーマ水槽は「飼育の日の飼育の話」。
2009年に(社)日本動物園水族館協会が 4月19日を「飼育の日」と制定したものです。
そこで飼育の日に因み、“えのすい”の飼育の話を 4月のテーマ水槽に企画したのです。
“えのすい”といっても、どうしても旧・江の島水族館のエピソードに偏ってしまいますが、歴史が長いぶん、今ではどうということもない生き物でも、当時は鳴りもの入りで日本にやってきたのです。

その一つ、「肺魚」。
ハイギョは昔から写真や生態が伝えられていましたが、日本には生体が輸入されたことはありませんでした。
ハイギョの仲間はアフリカ、南米、オーストラリアに分布していて、空気呼吸をする奇魚でした。
キノボリウオの仲間やライギョの仲間など、いくつか空気呼吸をする魚はいるのですが、あくまでも補助的なもので、基本はえら呼吸をおこなっていますが、ハイギョに至っては完全に空気呼吸に頼っているのです。
特にアフリカにすむハイギョたちは「夏眠」をすることも知られていました。
アフリカは雨季と乾季がはっきり分かれており、乾季になると池や河川の水が干上がります。
そのためハイギョは底の泥に潜り込み、粘液でできた繭の中で次の雨季が来るのを待つのです。

名前と姿は有名でも、実物が日本に来たのは 1956年、アフリカの大学への学術的協力のお返しに、アフリカツメガエルとともに江の島水族館にやってきました。
やってきてすぐに夏眠実験をおこなったそうです。
199日後、昭和天皇、皇后両陛下の御前で無事生存を確認しました。
繭から出てきたハイギョは水に戻る時、
「ギウゥ、ギウゥ」
とカエルのような大きな鳴き声を出したそうです。
と、解説文を書いている時には当時の担当の方の記述をそのまま書いていたのですが、“えのすい”で数年前に夏眠実験した映像にこの鳴き声が入っていたのです。
今月の映像でご覧になれますので、ぜひ聞いてみてください。
ちなみに、今回展示しているのは最大 2mに成長するプロトプテルス・エチオピクスの子どもです。
そして、映像のものはプロトプテルス・アネクテンスなのですが、実は当時やってきたハイギョの記述には「ハイギョ」としかなく、種の言及がないので、今回は「ハイギョ」としてご紹介しています。

プロトプテルス・エチオピクスプロトプテルス・エチオピクス

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