2011年05月08日
トリーター:寺沢

さらば、ホャ

鯉の季節。
5月の風をはらませてたなびく、鯉のぼり。
大きい真鯉はお父さん、小さい緋鯉は子供たち。
大きな口も、小さな口も、どれもこれも、風上を向く。

季節は一つ前の 2月、多くの人は南南東を向き、大きく口を開いた。
言わずと知れた、恵方巻にならって。
その年の福の神、歳徳神様のおいでになる方角だとか。

“えのすい”から見て、その反対の北北西に富山湾があり、そこからオオグチボヤのホャはやって来た。

その方角が鬼門であったかどうかは、甚だ疑問だが、“えのすい”に来て、590日目にホャは力尽きた。

本来であれば、きょう 600日目を迎えるはずだった。
前作に続いて、長編の『崖の上の僕ャ』を執筆していた。
残念だが、未公開のまま、お蔵入り。

風上を向き、大きく口を開ける鯉のぼりのように、深海の流水に向かって、オオグチボヤは、大きく入水孔を開けている。

・ほとんどのホヤが、同じ方向を向いている
・最大斜度に対して、直角に立ち、口を下に向けている
・口が重ならないように、上下、左右にずれて立っている

オオグチボヤは、効率的にプランクトンを食べている。

どうやら、我々のように歳徳神様を信じて、 口を開けていないようだ。

あの男は、ホャを悼むかのように、 無心で海のゴミを拾っていた。
何とか、新しい居場所を見つけたようだ。

えのすいビーチクリーンえのすいビーチクリーン

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