2011年05月25日
トリーター:寺沢

イルカが出産するとき

ちょっと前まで、母親は大きなお腹を抱え、ヒーヒーフーとでも声を発するかのように、プール底近くをゆっくりと上下に動いていた。
途中まで出ていた子どもの尾びれを出し入れし、わずかに背びれが見えた。
最後の力を込めて、ふーっと息を大きく出したか、と思った直後、赤ちゃんイルカの全身が突然現れ、母親と繋がっていた臍帯が真っ直ぐに伸び、子どもが少し引き戻された。
次の瞬間、臍帯は切れて、その周りは赤く染まった。
やがて、水面を勢いよく鋭角に飛び出し、全身を叩きつけるように不格好に泳ぐ、子ども。
追いかけ、寄り添う、母親。
乳母役のメスが子どもを挟むようにして、一緒に泳げば、完璧だ。

他のイルカたちは、脅えたように激しく泳ぎ、波立つ赤い水面。

出産とは、出血を伴った生理現象であり、ヒトではその止血作用は出産後 2日目が最も高いとの報告がある。
我々の研究においても、バンドウイルカでは妊娠とともに、止血作用は高くなっていた。

例えば、その血の臭いを嗅ぎつけ、襲来する外敵を避けるため、イルカの出産は早朝に多く、昼に少ない、と先人に学んだ。

5月24日 6時 6分、「シリアス」が出産した。

今いる、“えのすい”生まれのイルカを調べてみると、
「パル」は、9時 58分だった。
「ミレニー」、23時 5分。
「マリン」、8時 25分。
「アテネ」、10時 33分。
「ピック」、13時 41分。

必ずしも、その時間帯に出産する訳ではないようだ。

(右)母「シリアス」、(左)子供(右)母「シリアス」、(左)子供

イルカショースタジアム

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