2011年06月19日
トリーター:伊藤

里山のシンボル、ホトケドジョウ登場


相模の海ゾーンのキッズ水槽の一部を川の生き物にリニューアルしています。
左から二番目の水槽にはホトケドジョウが登場です。
当館のようにエコ活動や自然保護に取り組んでいる人や組織で、淡水の環境に関わっている場合、本種を抜きには語れない種です。
本種は淡水ならどこでもいるような魚ではなく、その生活場所は特殊な条件を備えていることが多いです。

私が見たり聞いたりして知る範囲では、
・湧水があるところ
・水深があまりないところ
・中州や岸辺に草が茂り、水中に垂れさがるところ
という感じです。

こうした環境は、あまり高くない山(丘陵)から流れる小川や、昔ながらの素掘りの水田用水路に備わっているものなので、本種が生息することが、豊かな里山が残されている目安となるのです。
そしてもう一つ、ホトケドジョウは、ある生物にとって「ゆりかご」のような役割を持つ事が、私達の調査で分かりました。
ヨコハマシジラガイという絶滅危惧種の二枚貝です。
多くの二枚貝(アサリなど)の赤ちゃんはプランクトンですが、シジラの赤ちゃんは寄生虫です。その寄生相手がホトケドジョウなどの淡水魚なのです。
魚体に寄生して栄養を貰ったり、川の上流に運んでもらったりしながら、稚貝へと変態します。
ホトケドジョウなどがいなくなると、いずれ貝も増えられなくなるという負のスパイラルに陥るので、こうした生物が棲まう場所は、できることなら変化させることなく、未来へと引き継ぐのが最良です。
そうした保護を考える上での材料やきっかけとなるように、調査し、その成果を世に送り出すことが、研究者たる学芸員の役割かと肝に銘じています。

小さなソーセージみたいな、コロコロとかわいい本種を見ながら、ちょっと踏み込んだエコ活動や自然保護のことを頭に浮かべていただけたら嬉しいです。

ホトケドジョウホトケドジョウホトケにたよるヨコハマシジラガイホトケにたよるヨコハマシジラガイヨコハマシジラガイの赤ちゃんヨコハマシジラガイの赤ちゃん

相模湾ゾーン

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