2011年07月17日
トリーター:植田

東京湾のとある河口干潟で


我々トリーターが館内業務を進めることと並行して、野外に出かけ、フィールドの生きものの観察と展示飼育用生物の収集をおこなうことは、このページで何度も紹介されてきました。
先日、相模湾に隣接する東京湾方面に出掛け、そこで観察してきたことをお知らせします。

東京湾は遠浅の海として知られています。
かつては海岸の大部分は泥と砂で覆われ、干潮ともなると広大な干潟が出現したそうですが、そのような場所のほとんどが埋め立てや海岸改修で陸地や人工護岸壁に姿を変えています。
東京湾に流れ出る河川の河口周辺も事情はあまり変わらないようです。

しかし、都市化された状況の中でごく一部砂泥が堆積したままの、いわゆる河口干潟を形成する河川が残されています。
今回の目的地は、とある河口干潟で、生物観察を兼ねて採集に赴きました。

そこで見られたのはおびただしい数のヤマトオサガニやコメツキガニ、そして浅い川底を這いまわっているマメコブシガニでした。
このうちマメコブシガニは近くの別の干潟より個体数が多く、長靴で歩き回れる程度の水深の川底で、汀線に沿って数を数えると、数メートルに 1個体か 2個体見つけることができます。
1個体か 2個体というのは、このカニの繁殖生態と関連性があります。
繁殖期である今の時期、雄ガニの多くが交尾相手の雌ガニを他の雄に奪われまいと、しっかり歩脚で抱きかかえて離さないようガードすることに拠ります。
先日も雄に抱かれた雌が頻繁に観察されました。

またカニといえば横歩きを思い浮かべますが、このカニは前にまっすぐ進むように移動します。
体の割には立派なはさみ脚を左右に大きく開きながら前に進むようすは、小さなブルドーザーが作業をしているようです。

我々は、この河口干潟で観察したカニたちの一部を水族館に持ち帰り、早速干潟の水槽に展示しました。
きょyもマメコブシたちはしきりに干潟水槽の泥底上を這いまわったり、大きな雄が小さな雌を(場合によっては小さな雄が大きな雌を)抱きかかえながら移動するさまを観察することができます。

マメコブシガニマメコブシガニ

相模湾ゾーン

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