2011年08月01日
トリーター:伊藤

幻想的なニゴリ


きょうは江の島の西側に注ぐ境川の河口へ生物採集に行ってきました。
三面護岸の壁面には、カキや外来ゴカイのカニヤドリカンザシがびっしりと付着していて、複雑に入り組んだ隙間のある空間を作り出しています。
これらの隙間には小さなカニやエビ、巻貝などが多数入り込んで暮らしており、そのまわりには、サツキハゼが大群で群れています。
三面護岸とは思えない生物の多さです。
さて、いつもならここで採集のお話をするところですが、きょうは魚が群れている水中の雰囲気のお話です。

現場は泥や落ち葉片などが無数に舞っていて視界が悪く、20~ 30cm先がやっと見えるくらいでした。
しかし、その「にごり」が実に魅力的な雰囲気なのです。
泥水であって泥水でない、細かいふわふわとした泥の粒子が無数に、ゆっくりと水中を漂う、その向こう側にサツキハゼの群れが見え隠れします。
魚たちはにごりで視界が遮られ、近くに隠れ場所もあるためか、逃げまどうようなこともなく、水流にあわせて右へ左へ向きを変えながらホバリングしています。
にごりの向こうに魚たちの世界を垣間見るようなこの感じは、透明な水の中で魚たちを眺めるダイビングや水族館とは趣の異なる良さを感じさせます。

残念ながら水族館では、この「美しいニゴリ」を狙って作り出すことはできていません。
ですが、水槽の掃除の後などに、たまたま似たようなにごりの具合になる場合があります。
当館の水槽掃除は日中にお客さまの前でおこなっていますので、たまたま掃除直後の濁った状態に出くわすこともあります。
濁っていて見えずらい、と思わずに、幻想的なにごりの霧の向こうから泳いでは消えていく、自然さながらの情景ととらえて鑑賞するのもありだと思います。

水槽掃除水槽掃除

相模湾ゾーン

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