2011年09月19日
トリーター:根本

痛いこと


生きていると、いろいろと痛い思いを経験します。
きょうは相模湾大水槽に潜っている際に、魚に手をバクっと咬まれました・・・。
いやーなかなかでした・・・ 。
ということで!きょうは「痛いこと」についてのお話です。

傷について調べると、色々と名前がついていることがわかります。
「切創」、「裂創」、「割創」、「擦過痛」、「座滅創」、「挫創」、「挫傷」、「銃創」、「爆傷」、「刺創」、「杙創」「咬創」、「熱症」、「褥瘡」。
ざっと調べただけで 14種類もありました。

よく聞くものから、読み方すらわからないものまで色々あります。
ちなみにキズも単純に「傷」と書いてはダメなようです。
“傷”は「皮膚の破錠を伴わない損傷」をいうらしく、「皮膚の破錠を伴う損傷」は“創”というそうです。
なかなか奥が深い!
(なんて書くと、やさしくも厳しい寺沢獣医に「バカだな、おまえは」といわれそうです・・・)。

さて、この 14種のキズでこの職業と縁のないのは「銃創」と「杙創」と「褥瘡」くらいでしょう。
銃創は・・・まぁ、いいとして、杙創(じょくそう)は「鈍いものが身体を貫通する傷」、どんな創なんでしょう・・・?
想像するだけで恐ろしいです。
褥瘡(じょくそう)は床擦れのこと。

『あれ「爆傷」もないでしょ?』
と思ったあなた!意外と可能性はゼロではないのですよ。
潜水用のボンベや酸素や二酸化炭素のボンベ、意外と高圧ボンベがたくさんあります。
爆発したら怖いですので、扱いは丁寧にしないといけません。

生きものがからんでくると、多いのが「刺創」と「咬創」です。
「刺創」はさし傷ですが、水族館のとげを持った生きものは、刺だけではなく、やっかいなことに“毒”まで持っているものが多いのです。
相模湾大水槽にも「ゴンズイ」「ミノカサゴ」「ハオコゼ」「アイゴ」「エイ」などの毒針軍団います。
みなダイバーに慣れているので、魚から攻撃してくることはありません。
しかし、ゴンズイやミノカサゴは、向こうから近づいて来きてくれたりしますので、振り返ると顔の前にいることもあり、「ドキっ」とすることがあります。
ゴンズイなどは“ゴンズイ玉”と呼ばれる大集団を形成するのですが、水槽の中でその集団の近くで「ブクブク」と息を吐くと、ばッ!と、みんな一斉に方向転換をしてこっちを見つめて突進してきたりもします。
それはそれはもう、恐怖の瞬間です・・・ 。
一度オデコに一撃をくらったこともあります・・・ 。

この種のさされる痛みはたいしたことはないんです。
ときには
「ん?ささっちゃたかな?」
といった感じの時もあります。
しかし、そこからがスタート。
ワンテンポ送れて毒針のあの特有の“にぶい痛み”がジワジワ始まり、刺されたとこからドンドンその痛みが広がって行きます。
足を刺されれば太股まで、指を指されると肘や二の腕くらいまで広がります。
その痛みは“動いてないのにひどい筋肉痛が襲っている”といった感じです。
私の経験では 3cmくらいのハオコゼから 30cmくらいのミノカサゴまで、傷みの種も強さもほぼ同じでしたので、小さくても毒針をもつ魚にはお気をつけください。

「咬創」は咬まれて創になることはまれです。
大水槽でのダイビングショー“フィンズ”でカワハギにエビを食べてもらうシーンがありますが、スッとエビをカワハギに差し出すと、そのエビに向かってイシダイとイシガキダイがこちらの死角から猛烈なアタックをかけてきます。
その時、エビだけに来るならいいのですが、たまに指に「ガブっ!」と来るときがあります。
あのラジオペンチのようなクチバシで、グリっ!と咬まれると、思わず声が漏れそうになります。
そしてかわいくも憎いのがアカメフグ。
イシダイなどとは違ってたまにしか来ませんが、目を輝かせながらどこからともなくピロピロ~っやってきて、エビの周りをモジモジと泳ぎ回ります。
そして、おいしいエビに狙いを定め・・・ モグっ!と食らいつきます。
そう、なぜか指に・・・ 。
イシダイなどのように一発に力を込めるのではなく、モグモグ、ゴリゴリ噛んできます。
手を振ってもすぐには離してくれません。
そしてきょうやられたのがこのアカメフグ。
たまたまグローブを外して作業していたのですが、ダイレクトに咬まれるとかなり痛いです。
きょうは「咬創」ができあがってしまいました(笑)。
大したことはないですのでご安心ください。
咬まれてめくれた皮を、ペッと戻してツバを付けといたらくっ付いて治療完了、といった程度です。

でもまあ何事も経験です!このように話のネタにもなりますしね。
そして、この咬んだアカメフグ、やっぱり憎めないですね~!猛烈にかわいいんです。
咬んでアゴに力を入れている表情すらもかわいらしいです。
大水槽に一匹だけのそんなアカメフグ。
隠れていることが多いですが、ぜひ探して、見てあげてくださいね。

アカメフグアカメフグ

相模湾ゾーン

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