2011年10月01日
トリーター:笠川

おいで、おいで、ほら、あなたもトリコ


今回は私の好きな生き物、お気に入りの生き物をひとつみなさんにご紹介したいと思います。
知れば知るほど、見れば見るほど、だんだん興味がわいてきて、きっとみなさんも虜になってしまうであろう、そうなってくれたらうれしい生き物をご紹介します。
実は、恐らくみなさんの印象はそれほどいいものではないであろう生き物なので、それが、これをきっかけに知って、実際に見てもらったら、きっと印象が変わってくれるかなと期待しています。

それでは、さっそく!
皆さん、ご想像ください。
そして、実際にその動きをしてみてください。

この生き物は、水中で、手で“おいでおいで”をしているような動きをしています。
盛んに“おいでおいで”をしています。
さて、この生き物は何でしょう?
そして、この“おいでおいで”は一体何をしているのでしょうか?

答えは・・・
実はフジツボなんです。
そう、私が今回ご紹介したい生き物はフジツボなんです。

みなさんは、フジツボと聞くと、磯なんかに行くと、岩なんかにびっしりとゴツゴツくっついている“これ生き物??”といった感じの生き物かと思います。
私も昔は、
“これ、何だ?生きてる?貝??”
なんて思っていましたが、実はフジツボは貝の仲間ではなく、エビやカニの仲間、甲殻類の仲間になります。
これもまず、へぇ~って感じですよね。
そして、水中でおこなっている“おいでおいで”の動作。
これは、餌をつかまえている動作なんです。
皆さんがよく見かけるフジツボの姿は、多くが水から出ている状態の殻を閉じている姿かと思います。
これが、水中に入ると、殻から“まんきゃく”という脚を出して、しきりに“おいでおいで”の動きをして、水中のプランクトンをとって食べています。
ちょうど、手でやってみると、“おいでおいで”をして、中指が手の平に当たった所が口になります。
この、“おいでおいで”の動きがとってもかわいらしくて魅力的で、見ていて飽きないんです。
たまに、クルックルッと動いたり、ピュッと引っ込んだりと、このフジツボの姿を見たら、きっとこれからフジツボの見方が変わるかと思います。

昔、“磯でこけると傷口からフジツボが生えてくる”といった都市伝説的な噂を信じていましたが、大学に入って、アホみたいに先生に質問したら、
「生えてくるわけないだろ」
と即答されました(笑)
こんな風にフジツボはあまりいい印象がないわけで。
でも、知れば知るほど、見れば見るほど、魅力的な生き物なんです。
磯でよく見かけるフジツボですが、実はいろいろな所に生息していて、水面をプカプカ浮かぶ流木から深海まで、実にいろいろな所にフジツボの仲間はいます。
また、“これ!”と決めたものにしか付かない種類もいます。
例えば、ウミガメにしか付かないフジツボ、クジラにしか付かないフジツボなど、本当に興味深いです。

みなさんも興味が出てきましたか?

館内でフジツボがよく見られる水槽は、冷たい海、暖かい海ゾーン、暖かい海ゾーンのマングローブ水槽にドロフジツボが木にたくさんに付いています。
タイミングがあえば、“まんきゃく”を出して“おいでおいで”をしている姿が見られるかもしれないので、ぜひ、じっくり観察してみてください。
きっとあなたもトリコになってしまいますよ。

ドロフジツボドロフジツボ

太平洋

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