2011年10月09日
トリーター:杉村

新江ノ島水族館を 10倍楽しく見る方法 その 2 深海生物編


温泉大好き!?ユノハナガニ!!
今回は、深海コーナーを楽しく見る方法をお話しましょう。
“えのすい”の深海コーナーでは、水深 200~ 1,200m付近までの深海生物を飼育展示しています。
今回はその中でもユノハナガニの水槽内で見られるオモシロ行動についてお話しましょう。

ユノハナガニは、深海の熱水噴出域だけに見られるカニの仲間です。このことから、温泉に咲く「湯の花」にちなんで名前が付けられています。
何とも素敵な名づけ方ですね。

水深 1,200mの深海では 300℃近い熱水が噴き出し、ユノハナガニたちは熱水噴出孔周辺の自分にとってちょうどいい水温の場所で生活しています。
深海コーナーの展示水槽には、岩の間からユノハナガニの好きな温度の温水(水槽内で 300℃の再現は不可能)が出る仕掛けになっています。
温水の出る岩のあたりを観察していると、数匹のユノハナガニが集っていることがあります。
これは、温水に体をあてて暖まっているところなのです。
いろいろな格好で暖まっていますが、時折、器用にカニの背側を温水の噴出孔に当てて、見事にひっくり返っていることがあります。
スケートのイナ○ウアーのように見事に腹側を上にし、バンザイをしたままじっとしています。
それを見るとあたかも死んでいるんじゃないかと思ってしまいますが、これがユノハナガニのオモシロ行動なのです。
背側の方の甲羅が薄いためか背側をよく暖めているようです。私たちがマフラーで首を暖めて、寒さをしのぐのに似ていますね。深海はユノハナガニにとってはちょっと寒いのでしょうか?
深海生物なのに変わっていますが、こんなところがユノハナガニの魅力でもあります。
実は深海にはユノハナガニの様に熱水噴出孔周辺の暖まった場所を好む生き物たちが他にも見られます。
この生き物たちについては、またいつか・・・。

深海という私たちとはかけ離れたの場所で生活している生き物ですが、温泉が大好きだなんて、なんだかとても身近に感じてしまいます。
みなさんはどうですか?

今回は深海コーナーのユノハナガニに絞ってお話ししましたが、1種類をじっくり見てみるのも水族館の楽しみ方の1つです。
生き物たちのハッとするような、オモシロ行動をどうぞ見に来てくださいね。

バックナンバー
新江ノ島水族館を 10倍楽しく見る方法 その 1

ユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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