2011年10月25日
トリーター:根本

卵の世話は母親におまかせ作戦

Ver.ユノハナガニ


もうだいぶ涼しいですね。
深海生物にとって一年で最も厳しい地獄の季節「夏」もようやく終わり、一安心と言う所でしょうか。
停電や節電など、低温キープが絶対条件である深海には厳しい状況でしたが、水族館の設備担当の方々の超絶な頑張りで、深海コーナーも無事夏を乗り越えた上に、館全体の使用電気もかなり抑えることができたようです。
館内照明は、表も裏もかなりLED化が進みました。
目の前に大きな壁が立ちはだかると乗り越えられるものなんですね。
設備のみなさん、ありがとうございます!

さて、深海担当の前にも乗り越えるべき壁が行列を作っています・・・。
そしてその中でも分厚い壁といったら繁殖!
やはり深海生物の繁殖は担当の夢です!
卵からかえり、どんどん育って、立派な成体まで育てられたら最高でしょうね!
ただ最大の壁ともいえます。
乗り越える方法もいろいろあると思います。
卵を採取して容器に入れて、発生を観察しつつ培養する方法なんかが一番観察しやすいのでしょうね。
発生段階も記録できるし、温度などの条件も変えられるので良いのですが、狭い容器ですので水質の悪化や細菌の発生など管理がそれはそれはとっても大変です。
設備的にも時間的にも水族館の飼育員にはハードルが高く、試みてもうまく発生が進まなかったり、ふ化した幼生が全然元気がなかったり、結果はイマイチです。
この方法はとりあえず置いておいて・・・、
現在は水族館らしくお母さん生物に考えられる最良の環境を提供する「卵の世話は母親におまかせ作戦」をとっています。

今回のターゲットは「ユノハナガニ」。
深海の温泉に集まる純白のカニで、深海の温泉地帯(熱水域と呼ばれます)に群がって生息するようすはまさに湯の花のようです。
このユノハナガニは温泉が大好き!
背中を温泉に当てるために、ひっくり返って腹が丸見え状態の野生動物ではあるまじき無防備な超絶リラックスモードに入ることもります。
「あ゛~極楽、極楽♪」
という声が聞こえそうです。
ただ、卵を抱えた親ガニはさすがにそこまで無防備ではないようです。
調査の際に探査機のカメラで見える深海の生息現場でも、卵を抱えて歩き回っているユノハナガニは見ないことから、きっと隠れているのだと思います。
岩の隙間で湧く温泉にこっそりとあたっているのでしょうか?
ナゾです。
そこでこのナゾを解きつつ卵を育てられる水槽を開発しました!
この江ノ島式ユノハナガニ保育水槽(仮)は、隠れ家と温泉という条件を水槽の一部に作り、親ガニが当たりたい時に当たってもらい、湯加減も温泉との距離で自由に調節してもらうシステムです。
我々は暖かく見守るだけです。
そしてそこには、母ユノハナガニが深海でおこなっている行動が再現されるはず!
深海に行かずして卵を持った親ガニの行動を観察できるという、とってもスグレモノなのです。

観察しているといろいろ面白いことが分かってくるんですよ!
その話はまた今度。

気になる方は、JAMSTECの横浜研究所の一般公開にいらしてくださいね。
“えのすい”も深海生物展示で参加します。
ユノハナガニも一緒です。
深海担当者がそばに立っていますので、話しかけてくださいね。
11月26日です。ぜひご参加ください!

◎JAMSTEC横浜研究所 施設一般公開
 2011年11月26日(土) 10:00~17:00
 → 終了いたしました

ユノハナガニユノハナガニ

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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