2011年11月15日
トリーター:杉村

熱水の『ゆらぎ』をご覧あれ!!


深海コーナーでは今、水槽内で熱水噴出口の「ゆらぎ」を再現しています。
先月のトリーター日誌で「温泉大好き!?ユノハナガニ!!」を紹介した水槽により改良を加えて、ユノハナガニのあたる熱水の「ゆらぎ」をはっきり見えるようにしました。
それと同時にもっとユノハナガニが観察しやすいように、水槽レイアウトも変更しています。

「ゆらぎ」とは・・・
・ある量の平均値は巨視的には一定であっても、微視的には平均値と小さなずれがあること。
・広がりまたはエネルギーや密度などの量の空間的または時間的な平均値からの変動をいう。
・熱平衡状態からのずれ、または熱平衡にほど遠い状態をいう。

などと国語辞典やインターネットでは書かれています。
どれも学問的でなかなか難しい表現ですね。

深海では約 300℃もの熱水が、4℃の海水中に噴き上がっています。
このすさまじい温度差や熱水(熱水には硫化物や鉄などの様々なものが含まれています)の密度などの差で、噴き出す海水が歪んで見え、そのようすがよく分かります。
さすがに水槽内で 300℃という高温の海水は作り出せませんので、30℃前後の熱水を出しています。

余談・・・
通常の大気圧中の水の沸点は 100℃ですが、水圧の強くかかった深海では沸点が上がり 300℃になっても沸騰しないで噴き出します。
逆に気圧の低い高山では沸点が下がって、低い温度で水が沸騰してしまうというわけです。


さて、話を戻します。
実際の噴出孔ではものすごい勢いで熱水が噴き出ていますが、水槽ではゆらゆらと陽炎のように見せています。
写真ではうまく「ゆらぎ」が確認できませんが、実際に水槽中央をよく観察してみるとちゃんとわかりますよ。
しっかり温泉の噴き出る雰囲気が出ています。
今でもやっぱり、ユノハナガニが背中を暖めています。
実はこの「ゆらぎ」もう一つの水槽でも再現しています。
今月 11日のおススメ生物「ネッスイハナカゴ属の仲間」のいるすぐ下に、噴出口があります。
このネッスイハナカゴ属の仲間は、300℃の熱水が周囲の 4℃の海水に冷やされてちょうど良い水温になってあたる場所で生活しています。
噴出孔の上で盛んに熊手のような脚を動かしています。
そのようすを見てもらいたいと思います。

深海コーナーの水槽では、生物たちの生活環境をちょっとした工夫で再現して、展示しています。
ぜひ、私たち飼育係の工夫を探してみてください。

ユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTECユノハナガニ (C)JAMSTEC

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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