2011年12月08日
トリーター:石川

休館日の経験


12月です。
・・・時がたつのは早いもの、おやつの時間が来るのは遅いもの・・・なんだか小さい頃に読んだ漫画の一節が思い浮かんできました。

生き物たちに年末や年越しなんていう概念はないでしょうが、毎年この時期にメンテナンス休館日があります。旧江の島水族館時代も 12月31日の 1日だけ同様にメンテナンスや新年に向けた準備をする日として休館していました。
いつも抜かない大きなプールの水を抜いて作業したり、大がかりな塗装を施したり、夜間だけではできない大がかりな作業をおこなったりします。

いつもの場所に居る生き物たちも、その雰囲気に「何か違うな!」ということは多かれ少なかれ感じ取っていると思いますが、今回のペンギンたちのように全く違う場所へ一時引越したりする場合はなおさらです。

今回この一時引越の経験がはじめてだったのは「ユメ」、「メロディー」、「フク」、「ノゾミ」の 4羽です。カマイルカが居るプールの奥に仮住まいしているのですが、このプールはペンギン用に作られていませんのでプールから上がる時にステップを使わないと上がれないのです。
こんなもの使ったことがない新人 4羽は初めの夜は遅くまで泳いでいました。上がり方がわからないんですね。たいていは他の先輩ペンギンにつられて自然に上がってしまうのですが、全く違う環境へ来たので、陸より水の方が危険から逃げるのには都合がいいのです。ですから上がるのをためらううちに、先輩ペンギンたちが先に上がってしまい、上がり方もわからなくなってしまったという状況です。
まあ翌朝には上がれるようになっていましたが・・・。

そして気温の変化。新江ノ島水族館になってから生まれた 5羽以外は外で飼育されていたこともあり、夏でも冬でもまあこんなもんかと思うでしょう。
しかし、室内しか知らない 5羽のうち「コハク」はすでに経験済みですが、昨年以降に生まれた 4羽は外気温の変化も体感していることでしょう。
その他にも、頭上を時々通過する鳥たちとその鳴き声、波の音、雨、車の音、工事の音、目の前のカマイルカなどなど・・・。そして若い個体は適応も早い!先輩や親の見様見真似、集団心理のなせる技か、後をついて行動することですぐに覚えていきます。
若い個体はここからが本領発揮なのですが、その頃には戻らなければならないのです・・・。トリーターとしてはちょっと残念。若い子には旅をさせたい気持ちです。

新人たちに対してベテランの 22歳の「リン」(茶色のタグ)や 21歳の「ルビー」(赤色のタグ) 19歳の「モンチ」(黄白色のタグ)は肝が据わっています。真っ先に自身のベストポジションを見つけてあまり動きません。
たいていは石の上とか気に入ったボックスの中とか下からも冷えが来ないところです。他個体が右往左往している最中に陣取るので、気付いた時にはすでに彼女たちの縄張りです。また急なステップもあまり気にせずいつもの朝の水浴びをしに行くマイペースぶり、経験内での対応にはムダがありません。彼女たちは外で飼育していたころに生まれたペンギンたちです。里帰り的な気分になってもらえるといいのですが、生まれたところとは違うので、ぬくぬくな室内の方がホントはいいのでしょうね。

ちょっとだけ経験を積んだ新人 4羽にはもうちょっとで再会できますよ。

仮住まい仮住まい左: ユメ、右:メロディー左: ユメ、右:メロディー左: フク、右: ノゾミ左: フク、右: ノゾミ

ペンギン・アザラシ

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