2012年01月18日
トリーター:石川

クッキー


先日 10日に 1羽のペンギンがこの世を去った。
黄と黒の 2色のタグをつけていた「クッキー」という雌のフンボルトペンギンだった。
旧江の島水族館時代は「Ⅱ黄Ⅱ」(ニイキノニ)と呼ばれていた。

ペンギンストーリーでもたまに水中で参加して名前を聞くくらいで、あまり前へ出る性格のペンギンではなかった。

1996年4月15日生まれ、私がペンギンを担当して 2羽目にふ化した個体で、その前の「サニー」を経て、その親ともども子育ての経験 2回目なのだが、雛が育つ過程であれほど心配なく育った個体は今でもそんなにいない。

こと健康に関しては今の今まで身体を壊すこともないどちらかというと丈夫なイメージで、父親似の雌にしては骨格のがっちりした体形だった。
給餌の時間になって他個体が食べているのが待ちきれないと時々、係員を突いてきたりもする食いしん坊でもあった。

“えのすい”のペンギンたちは同年、または近い年生まれの雌同士のペアがとても多い。
クッキーと同年の 12月に生まれた一番歳の近い「セサミ」(黄赤のタグ:♀)と仲がよく、「クッキー」が雄で「セサミ」が雌と思うほどであった。
その理由は・・・ 「セサミ」と「クッキー」は「チョキ」を育てた親なのだが、雌雌のペアで番(つがい)ではない。
しかし有精卵が産卵されて「チョキ」がふ化したのだった。
この 2羽は産卵時期もほぼ同じ時期に合わせてくるため、しっかり観察していないとどちらが産卵した卵かわからなくなってしまうほどだった。
後にDNA検査で調べた結果は、「チョキ」の本当の母親が「セサミ」で、「クッキー」は育ての親だった。

2羽の絆を見届ける最後の出来事は、「クッキー」が息を引き取る直前だった。
少し離れて静かにようすを見守っていた「セサミ」が、「クッキー」の容態が急変したと我々が気づくのとほぼ同時くらいに駆け寄ってきたのだ。
なんど離してもまた駆け寄っていくのである。
ここまでほとんど一緒に過ごしてきた親友に対して、我々が取る行動となんら変わるものではなかったと思う。

感情的な話しはこういった現場ではあまりしないのだが、生き物たちが見せてくれる純粋な行動は、時に我々の心にストレートに入ってくる。

フンボルトペンギン「クッキー」フンボルトペンギン「クッキー」

ペンギン・アザラシ

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