2012年01月23日
トリーター:足立

冷たい海の小さなゆるキャラ~ダンゴウオ~


「枕団子」 清湘南言
冬はつめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。潮は夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。ダンゴウオの照らされてふよふよと、三つ四つ、二つ三つなど、泳ぎ出るは、いとをかし。

(現代語訳)
冬は冷てえ~。でも、それがよい。雪の降ったときはいうまでもない。冬は夜によく潮が引く。満月の時期はなおさらだ。新月もなおよい。ダンゴウオが灯りに照らされて、ふよふよと、3匹4匹、2匹3匹などと、泳ぎ出てくるようすはとても面白い。

清湘南言によってこの作品が発表されたのは2008年1月23日です。実は当時、清湘南言は自分でダンゴウオを採集したことはなかったのですが、館に勤める人々の体験談を聞いて深い愛着を覚え、この文を書いたのでした。
そして、この「枕団子」発表の 1年後、ついに矢も楯もたまらなくなり、ダンゴウオを求めて、彼女はひとり冬の海へ繰り出します。行先は館からほど近い名勝江の島の磯。でもこの時は見つからず、その後、館に仕える手練れの同僚たちとさらに南方の磯に出かけ、とうとう自然の中に生きるダンゴウオと対面を果たしたのです。

さて、清湘南言の時代から 4年の歳月が流れ、時は現代、2012年1月23日。再びこの日にダンゴウオのことを書くことになろうとは。

昨夜、総勢 10名の胴長隊が江の島の磯に出動しました。プロ?アマ寄せ集め軍団ではありますが、「夜の磯でダンゴウオに会おう!」という旗印の下に名乗りを上げて集まった猛者ばかりです。

にぎやかに和やかに、部隊は江の島へ向かい、目的の磯へと降りて行きます。
隊長が、ではこのへんで、と探索開始の号令直後、なんと、長靴で参加の軽装小隊の一員が、ダンゴウオを発見!「いた~!!」という、感極まった悲鳴のような報告に始まり、もう、隊内は騒然。それこそもう、やんややんやの大騒ぎ。時刻は夜中の 22時ごろですから、もし通りがかりの人がいたら、いったいナニゴト?という、はしゃぎよう。普通の人はいない冬の夜の海でよかった・・・。でもこれで、俄然、みんなのやる気度が上がりました。

結果、ダンゴウオがなんと 4匹も、私たちの前に現われてくれました。そのほか、銀色に光るムギイワシ、カゴカキダイの幼魚、バフンウニ、クロイソカイメン、アメフラシのなかまたち、ミノウミウシのなかま、エビいろいろ、ヤドカリ類、巻貝たち、イソギンチャクのなかまたちなどなど。その場できちっと種名がわからない点、わたしもまだまだ修行が足りませんが。そしてそれらに木陰や止まり木を提供してくれているかのようなさまざまな海藻類。

ダンゴウオをはじめとして、これらはみな手のひらに収まるほどの小さな生きものです。
清湘南言から遡ること 1000年余、かの清少納言も「枕草子」の中で、「なにもなにも小さきものはみなうつくし」と、小さな生きものたちを愛でています。

さて、このダンゴウオ、小さくてかわいらしいのですが、どちらかというと、かなりゆるキャラ系です。しかしながら、出会った人にささやかな幸せをもたらす大きなパワーを秘めた魚です。それそ立証するかのようなできごとが、昨夜の江の島での、全員笑顔の観察会かもしれません。

実は、ダンゴウオがたくさん棲んでいるのは、東北地方の太平洋側です。人々を笑顔にするダンゴウオに出会えるメッカの地、東日本の復興が進むよう、“えのすい”はずっと応援を続けてゆきます。

ダンゴウオダンゴウオ

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