2012年06月11日
トリーター:足立

ウはウミウシのウ


ウミウシは好きですか?
どんなところが?

6月は、館内各所でウミウシに因んだ展示やイベントがおこなわれていて、いろいろなところでウミウシとその仲間たちに出会うことができます。
石の下とか、海藻の隙間とか、ウミウシは探して見つける楽しみもありますよね。

さて、冒頭の問いかけへの私の回答です。

→ ウミウシは好きです。
「海の宝石」ともいわれるあのきれいな色。私も(まず)そこに心を魅かれたひとりです。
しかし、しかし、これはウミウシの、そしてウミウシを取り巻くディープな世界への、ほんの入口にすぎなかったのです。
より地味なウミウシ、より小さいウミウシ、ウミウシの卵、ウミウシの幼生、ウミウシが食べているもの、ウミウシが食べているものがいる場所・・・ 。
こうなるともう、海の中のもしゃもしゃとなにか生えている石ころひとつに世界を見る感じです。
この調子で行くと、そのうちに、「一粒の砂に世界を見る」ようになれるかもしれません。

人気者のウミウシたちですが、飼育・展示は難しいので、常設で展示している水族館は案外少ないのではないでしょうか。
理由としては、小さいこと、隠れること、餌の供給が難しいこと、ふ化した幼生を育てるのが難しいことなどが挙げられます。

さてそんな中、私は今月初めにおこなわれた「ウミウシ採集ウミウシ研究」のイベントで海岸へ行った際、あるウミウシを初めて自分で見つけました。
その名はオカダウミウシ。
図鑑で姿かたちは確認していました。
餌はわかっているし、孵化した幼生も比較的大型で、すぐに海底を這う生活を始めるので、飼育し易い・・・ はず。
展示上、最大の不利な点は、なにしろ小さいことです。
某図鑑には「・・・ごく浅い岩礁域、転石下などで見られる普通種。 3mmに達する。」とあります。
3mmに「達する」って・・・ 。
ウズマキゴカイを食べているので、これがたくさん付着している浅瀬の転石を拾い上げてひっくり返し、ミクロの目で見てみると、「今まで気づかなくてゴメンね。」といいたくなるぐらい、大勢のオカダウミウシが暮らしているではありませんか!
なるほど、これだけいれば普通種ですね。
但し大きさは 3mm前後です。
その傍らには、この親のサイズから考えたらとても大きな 1~ 1.5mmほどの卵塊も見つかりました。
タッチプールにも、ウズマキゴカイがいっぱい付着した石が入っていますが、ミクロの目でよく見ると、オカダウミウシと、その卵塊を見つけることができますよ。
卵はおそらく 2~ 3週間でふ化するのではないかと思いますで、順調に行けば、今月末にはオカダウミウシの子どもが石の上を這っているはず。
でもこちらは、肉眼では見えないかなあ。

こんな風に、知らないから見えていない生きものが、身近なところにもたくさんいるに違いありません。
たくさん見えたら楽しいと思うので、五感の全てをアンテナにして、生きもののいる気配や、「何かが道をやってくる」気配をキャッチする能力を高めたいと思うのです。

オカダウミウシオカダウミウシ

タッチプール

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