2012年10月01日
トリーター:根本

JAMSTEC一般公開


先日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の一般公開に参加してきました。
“えのすい”とJAMSTECは深海生物の長期飼育技術を開発するために共同で研究をおこなっており、一般公開ではその成果として長期間飼育に成功している深海生物の展示をおこなっています。
毎年、春は横浜研究所、秋は横浜研究所の一般公開に参加しています。
先日は横浜研究所での展示でした。
展示をご覧いただいた方はいらっしゃいますでしょうか?

数年前からはJAMSTECの広報課とのコラボレーション企画「KOHOO航海」に合わせ、相模湾初島沖の湧水域に生息する深海生物の展示をメインに展示をしています。
ただ、湧水域の生物は地味なものが多く、展示としてはパンチ力に欠ける傾向にあるので、例年は見た目に花があるゴエモンコシオリエビやユノハナガニなどを連れていっていたのですが、やはりKOOHOO航海の一員で参加していますからね、今回はトコトン相模湾にこだわりました!

でもやはり相模湾の湧水域の生物はやっぱりちょいと地味なのですよ。
もちろん超貴重な生き物たちですし、見た目じゃ分からない魅力も満載です。
でもまあ地味ですな・・・ 。
今回連れて行った生物は、海底から硫化水素やメタンが湧く湧水域にしか生息しない、化学合成生態系の一員であるシンカイヒバリガイやオハラエビ、ゲンゲ科の一種、サガミハイカブリニナ。
・・・ 渋いメンバーです。
エビはパッと見はただのエビだし、ヒバリガイは動かないし、ゲンゲはすぐ隠れちゃうし、ハイカブリニナは小さいうえに色も形もこれといって深海っぽさもなく・・・ 、見た目的にはちょっと辛い構成です。
サガミハイカブリニナは、初めて大々的に公開したかもしれませんね。
行方不明になるのも困るので、大きな水槽に入れることなく、ずっと裏の水槽に小さなプラスチックケースに入れて静かに飼育していました。
この貝は湧水域で最も個体数の多い生物、つまり最も繁栄している生物といって良いのですが、サイズと見た目の地味さでスポットライトをあびることは今までありませんでした。
今回はメンバー不足で急遽、選抜メンバーに抜擢されたわけです。

湧水域の生物は飼育するのが難しいものが多いのです。
本当ならシロウリガイやサガミハオリムシ(仮名)などスター選手を持っていきたいのですが、長期飼育が恐ろしく難しい、いやできていないといってもいいですね。
外に持ち出して、急遽作った水槽に入れるなんて今はマダマダ不可能なのです。

しかし!
生物の魅力を伝えるのが飼育員の使命!
飼育員は水槽に生き物入れて世話しているだけではだめなのです。
あらゆる手段でその生物、またはその世界観をお客さまに伝えられなければダメなのです!
派手な生き物を持って行って楽をしようとしてはイカン!
控えめな魅力、日本的でよいではないか!
と自分を戒め、計画書を見て
「うわ!地味!」
という深海チームの某S村氏の意見にも、
「これでいいのだ!」
言い張り、深海リーダーが持つわずかな権力を振るい断行したのです。
このようなイベントは自分が水槽の前に立つことができますからね、むしろわかりづらい生物を見ていただくチャンス!
ただ、小さなお子さまにはわかりづらいですからね、難しいこと言って
「ね!スゴイでしょ!!」
といってもちょっと・・・ 。
小さなお子さまに深海の魅力を伝えるのも大きな使命!
ということでわかりやすいタッチプールも持っていきました。
中身はもちろん深海生物!
トラザメとオオグソクムシ。もちろん相模湾産!

ちなみに深海タッチプール中の生き物は、京急油壷マリンパークさんに協力してもらいました。
マリンパークのみなさま、ありがとうございました!
また、“えのすい”は水深 1000m付近の湧水域の生物、マリンパークさんには 200m~ 500m付近のイガグリガニやホモラなどの深海生物の展示と役割分担して展示をおこなっておりました。

KOOHOO航海の面白いところは、JAMSTECの広報課を中心に関東近縁の博物館と水族館が集まって行っているところですね。
以前より繋がりがないわけではないけれども、これほど密着した繋がりで水族館と博物館で仕事をおこなうことはとても珍しいことなのですよ。
近隣の水族館が一緒にイベントやることなんて、皆無に近いことです。
水族館は民間が多いですからね、ライバル意識は強く、コラボするのは悟空とベジータがフュージョンするのと同じくらい難しいことなのです。

でも、このKOOHOO航海だけは別です。
水族館では“えのすい”、京急油壷マリンパーク、葛西臨海水族園で力を合わせておこなっています。
普段一緒に仕事をしない同業者と力を合わせて何かをするというのは、刺激的で勉強になることも多いです。
個人的にはこのようなコラボが増え、水族館業界自体をドンドン盛り上げられたらいいなと思います。
なによりこういうのは楽しいですしね!
この楽しさはきっと見ている方にも伝わるはずです。

といった感じで終わっちゃったイベントの話でした。
JAMSTECの一般公開は毎年やっているので、参加されたことのない方はぜひ一度いらしてくださいね。
日本の海洋研究の最先端が垣間見られ、かなり楽しいイベントです!

独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)

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