2013年01月03日
トリーター:杉村

深海トリーターの「裏技」公開!!


あけましておめでとうございます!!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今回は、私たちがトリーターが採集された深海生物におこなうケアの“裏技”を紹介します。

裏ワザ:その 1
「ガス抜き」
ガス抜き・・・って、何でしょう? ・・・それは・・・
深海魚たちは深海の高い水圧下で生活しているので、水圧の少ない水面まであがって来るとお腹の中にガスが充満して風船のように膨らんでしまって、その多くが生きられません。
ですが、中にはお腹が膨らみ水面に浮かんでいても元気に潜ろうとする魚もいます。
そんな魚たちは、生きて水族館へ連れて帰れる可能性があります。
が、そのままでは泳ぎ続け、やがては体力が尽きしまうので私たちは「あること」をします。
それが・・・ガス抜きです。
おしりから注射針を刺して、注射器を使って溜まったガスを吸いだしてあげます。
うまく刺さなければ、逆に怪我をさせてしまうので慎重に・・・さらに、この裏技は通常、揺れた船の上でおこなうので自分も怪我のないようにやるのが、とても大変、大変。
うまく針がガスの所まで辿り着くと、あら不思議、ほとんど力なく注射器のシリンジが引けるようになって、ガスが抜けていきます。
すると、ガスの抜けた魚はスーッと潜って行きます。
これで一安心といったところです。

裏ワザ:その 2
「人工呼吸」
エッ!! 魚の人工呼吸!?
と、思われるかもしれませんが、人工呼吸をやります。
採集のショックや長時間の輸送でフラフラになった魚たちを元の元気な姿に戻すために行います。
私たち人間は横隔膜によって肺を動かして、空気を吸って呼吸をしていますが、魚たちは、ほほにある鰓蓋を動かして、口から吸いこんだ海水をエラに通して呼吸をしています。
ショックをおこしたりした魚たちは、この鰓蓋の動きが悪くなって酸欠状態になります。
そこで、口に大きさに合ったホース(エアーチューブなど)を口に入れて、注射器やポンプで海水を送ってあげると・・・何とびっくり!! また、泳ぎだします。
人工呼吸の時間は、状態によってマチマチですが自分で鰓蓋を動かして呼吸ができるようになれば、一安心です。


・・・と、いうことでこんな「裏技」を使って、採集された深海生物たちのケアをおこなっているんです。
今回は採集された深海生物のケアについての「裏技」を紹介しました。
実は、この他にも「裏技」はたくさんありますが、それはまた今度・・・。
私たちトリーターは、ただ生物を持ってくるだけではなく、いろいろな手間をかけ、苦労をして、やっとの思いで持ち帰ってきています。
ぜひ、これから深海生物をご覧になる時は「いろんな苦労があるんだなあ」と思っていただけると嬉しいです。
深海からやってきた 1匹でも多くの生物を元気な状態で水族館へ持ち帰り、ただ持ってくるだけではなく、その生態の研究をおこなって、また自然な姿をみなさんにお見せできるように頑張ります。

それではまた!!

ガス抜きガス抜き魚の人工呼吸魚の人工呼吸

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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