2013年03月15日
トリーター:伊藤

生き物を扱うプレッシャー


水族館では、相模湾大水槽などのいわゆる「常設展」の他に、特別展というものがあります。
ある時期になるとパッと展示して、一定期間の後に変更したり、撤収したりする展示で、テーマ水槽を筆頭に、最近では水族館の随所に突然水槽が現れます。

私たち担当者は、これらの準備を水面下で進めています。
機材の準備もそうですが、特別展示を控えた多くの生物の予備飼育が大きなウェイトを占めます。
自分たちで採集して来たり、漁師さんや業者さんから購入したりと、さまざまなルートでやってくる彼らとの出会いは、楽しくもありますが、正直、大きなプレッシャーでもあります。

一般的に、新しくやってきた生き物には検疫が推奨されます。
万が一、伝染力の強い病気を持った魚を健康な水槽に入れてしまうと、心臓をわしづかみにしてしまうような惨事に発展することがあるわけです。
なので、魚の生残を手堅くするために、いろいろな場所に分散させて入れたり、検疫用の水槽を新たに設置したりしますので、イベントの少ない時期に比べて、バックヤードの水槽数は 2~ 3倍になったりします(今がまさにそうです!)。
「どうか病気がでませんように」
「展示開始まで状態がよくなりますように」
「お願い、死なないで」
こんな思いが胸中に渦巻くなか、これらの新参者の状態に目を配る日々です。

昨日、1つのイベント水槽が無事千秋楽を迎えました。
実は途中で病気が出たりして、治療などのメンテナンスに追われていたのですが、展示期間後半では安定してきました。
イベント水槽はやっと安定してきた、と思ったら終了なのです・・・。
でも、肩の荷が一つ降りたような安堵感もあります。

水族館で働くようになって、生き物を扱う仕事の意外なほど大きな重圧を実感しているわけですが、同時に、生き物を扱って生計を立てている他の職業の方も、さらに大きなプレッシャーと戦っていることだろうと考えたりします。
身近なところでは熱帯魚屋さんや養殖業者さん、農家の方々です。
熱帯魚屋さんへはプライベートでもよく行くのですが、よくもまあ、あんなに代わる代わる入荷する熱帯魚を「売れるまで」とはいえ、状態よくキープできるものだと感心してしまいます。
農家の方々も害虫や台風を被るたびに、すさまじいプレッシャーと戦っているのだろうと想像されますし、尊敬の念を抱きます。

予備水槽予備水槽

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