2013年10月15日
トリーター:根本

無脊椎動物に心はあるか?

アオリイカアオリイカ

先日、面白いシンポジウムに行ってきました。
その名も「無脊椎動物に心はあるか?」
もちろん怪しげな団体のシンポジウムではありません。
公益財団法人 水産無脊椎動物研究所 設立 25周年記念イベントです。
会場は東京大学伊藤国際学術研究センター。
生まれて初めて“赤門”をくぐりました。
「東大なんて何ぼのモンじゃい」と何気なく通り抜けては見たものの、やっぱり、何といいますか、こう、得もいわれぬオーラに当てられ、モゾモゾ携帯を取り出して写真をとってしまいました。かまえた携帯をおろして眺めていると、浪人時代の思い出がふと蘇ります。もちろん東大なんておとぎ話に出てくるような存在だったので思い出も何もないのですが、「人の能力」について、雨に濡れる赤門を見てしばし考えてしまいました。

さて、話は無脊椎動物の心について。お話は 3題ありました。
「カニ」と「イカ」と「ダンゴムシ」です。
『下等な無脊椎動物には心が生まれるような高等な脳はなく、物事に対し反射的に動いているだけで、心は存在しない』なんて話ではなく、心が垣間見られる生き物の行動や研究の紹介が続き、とても和やかで笑いのある楽しいシンポジウムでした。
個人的な感想ですが、心が垣間見える瞬間とは人間ポイ動きをすることなのでしょうね。「あー、その気持ちわかる!」というような行動や、個性が表れる瞬間など、共感できる行動に人は心を感じるといえそうです。

中でもアオリイカのお話は特に感心させられました。
イカは貝の仲間です。高度な体の仕組みを持たない“貝”ですが、イカは脊椎動物にも負けない能力を得るため、眼も脳も驚くべき発達をとげています。
心の研究では鏡が理解できるか、つまり「自分」を理解できるかという自己認識能力が、一つのキーワードになっているようですが、イカは鏡に映った姿を他のイカとは認識せず、興味深げに足で触りながら見つめる行動が見られるそうです。
また、他の個体についても、それぞれ「この子はナニ君で、この子はナニ子ちゃん」と識別し、互いに順列があり、No. 1イカに対しては、餌が目の前にあっても遠慮するそうです。
また、最下位付近のイカはさまざまなイカに気を配り、派閥間のコミュニケーションの橋渡し役になるなど、どこかで見たような社会の仕組みがあるようです。また生まれたとき引っ込み思案なイカはおとなになっても変わらないといった“個性”も持っているようです。

動物の気持ちは科学的に理解するのは難しいのかもしれませんが、飼育していると生き物たちの感情の動きは日々感じます。発達した脳が心を生むとは限らないともいいます。何かを欲しいと思う気持ち、怖いと思う気持ち、守りたいと思う気持ち、どんな小さな生き物にも見られます。
きっとそこには「心」があるのではないかと私は思います。
ぜひ水族館にいらした時には生き物の「気持ち」や「心」を意識して見てみてください。面白さも倍増しますよ。特に非常時は出やすいですね。これも人によく似ています。

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