2015年07月05日
トリーター:伊藤

クサフグ赤ちゃん育ててみてます

クサフグの稚魚クサフグの稚魚

前々から育ててみたいなあ、と思っていた魚がいます。クサフグです。
フグとしては小さなサイズと、体中に毒を持つことから、ほとんど食用にされません。
本来であればマニアックなフグなのでしょうが、その特殊な繁殖生態から良く知られています。
春の終わりから今頃にかけてが繁殖期。潮の干満の差が大きくなる大潮に合わせて、大群で浅瀬にやってきます。そして、最も潮位が高くなる時間帯の少し前になると、どんどん浅瀬へ浅瀬へと押し寄せ、放卵、放精するのです。
中には自ら陸へ乗り上がってしまう個体もいます(不器用ながらもバタバタと海に戻る個体が多いです)。
この無骨ながらも感動的なシーンを見ようと、産卵がおこなわれる海辺を訪れる愛好家が絶えません。当館でもほぼ毎年、江の島内の丸秘スポットでの観察会を実施しています。

さて、飼育係としては、生まれたばかりの赤ちゃんクサフグを見たい!育てたい!と思ってしまうわけです。
ベテラントリーターに聞くと、ダイナミックな行動をとるクサフグも、さすがに人影が濃いと繁殖を諦めてしまうとのこと。繁殖行動中に近付くことは遠慮したいところです。
繁殖行動がひと段落し、親フグたちが海に戻った後に少しだけ採卵することは可能では?ということで、先日、北嶋トリーターが、産卵がおこなわれた周辺の砂をかきまぜて、卵かな?と思われる黒い粒を少しだけ持ち帰ってくれました。
肉眼では卵かどうかも怪しい。
どうやら卵らしいものの、受精しているかわかりません。
数も少ないのであまり期待せず、途中、不覚にも存在を忘れていました。
10数日も経ったころでしょうか。極小のオタマジャクシのような赤ちゃんが泳いでいました。まじまじ見たのは初めてだったので感激です。
ただ、うまく育てられるかどうかは自信がありません。
カタクチイワシやクマノミで、海水魚の仔魚育成の難しさは実感していますので・・・ 。
カタクチイワシやクラゲの餌用に、生きたワムシとアルテテミアを常備していますので、これらを与え、最善を尽くしたいと思っています。
もし良い結果が得られましたら続報します。

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