2015年08月05日
トリーター:根本

夏休みの深海探検

サツマハオリムシサツマハオリムシ

夏休みはいかがお過ごしですか?
夏休みを楽しんでいるお子さんや学生さんをタッチプールやバックヤードツアーなどで見ていると、「夏なんだなぁ」と実感がわき、学生時代に過ごした遠い青春の日々を思い出します。児童・学生のみなさん、悔いの残らぬよう夏を過ごしてくださいね!

さて! 8月 8日より海のイベントに参加するため鹿児島に行ってきます。
これは小学生を対象としたイベントなのですが、なんと深海調査船に実際に乗って深海生物を観察してしまうイベントなのです!
実際に深海研究に使用している調査船「なつしま」と無人探査機「ハイパードルフィン」を使い、鹿児島湾の海底を調査します。時には研究用の生き物も採集も行う事もあり、深海好きにはたまらないイベントです!
このイベントは、正確には国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)で毎年企画されている「はがきに書こう海洋の夢コンテスト」のコンテストに入賞された方々に与えられる特典になります。今回私はその調査のお手伝いとして参加することとなりました。

私もいろいろ深海調査に参加させていただいていますが鹿児島湾の調査は初めてです。
物凄く楽しみですね。なぜならここ鹿児島湾の海底には世界に誇る「ある生物」が初めて発見された場所ですからね。鹿児島湾の世界的生物といえば、そうです!!「サツマハオリムシ」です。
ミミズやゴカイの仲間であるこの「サツマハオリムシ」ですが、他の動物とは一線を画す物凄く強烈な個性を持っています。動物なら当たり前に持つ口も胃も肛門も無いのです。
食べることをやめた動物、それが「ハオリムシ」。海底の温泉が湧く場所や湧水が湧く場所、さらには死んだクジラの骨や沈没船などで見つかる生き物です。その様な場所では「硫化水素」が湧いていて、それをエネルギーに換え生きています。
このハオリムシの仲間は数百メートルの深海で見つかることがほとんどなのですが、鹿児島湾ではなんと水深約 80mに生息しています。世界一浅い所にいるハオリムシ、それが「サツマハオリムシ」です。

えのすいでは小笠原の日光海山水深約 400mで採集したサツマハオリムシで飼育実験を行い、飼育方法を探してきました。
試行錯誤を繰り返し、飼育も 6年目となり比較的長く飼育できています。ただ、いまだにうまくいかないことがたくさんあります。実際に今、これまでにないスランプに陥っています。前は当たり前のようにできていた事が全然できなくなりました。思うような状態にすることができていません。
いまいち元気がないというか、何かにストレスを感じているような感じです。
改善しようと水を変えたり、掃除をしたり、硫化水素濃度を変えたり、pHを変えたり、二酸化炭素を与えたり抜いたり、時には優しく励ましたりと思いつくことを手当たり次第やっているのですが回復の糸口が見えません。うまく飼育できるアイデアは無いかと日々悩んでいます。

こんな時こそ現場なのですね。
実際に生息する現場を見る事で何かアイデアが浮かんでくるのではないかと期待しています。
日光海山に採集しに行ったのが 2009年、自然界のハオリムシを見るのは 6年ぶりです。
6年ぶりに見る自然界で生きるサツマハオリムシは自分にどのように見えるのか。楽しみです。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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