さて、いきなり質問です。
このトリーターが手に持っている板は何に使うのでしょうか??
きっとさっぱり分からないですよね。その答えはまた後ほど。
板の後ろのイルカがヒントです。
話しはやや変わりますが、動物たちの健康を管理する為の検査として採血があります。
“えのすい”で飼育しているイルカたちは一か月に一回、採血を実施しているのですが、この採血をする為にはイルカたちに協力してもらわないとできません。
尾びれの血管に針を刺して採血をするのですが、イルカたちにはトリーターに尾びれを持たせてね、針を刺してもじっとしていてね、というトレーニングをしています。
なので、痛い採血をするにも無理やり捕まえてするのではなく、動物たちに協力してもらってやっています。
私が担当しているバンドウイルカの「ピック」は採血が比較的得意で、今まであまり採血を嫌いになったことがありませんでした。
ですがここ数か月、「ピック」の中で採血が嫌いになってしまったみたいで、採血をすることができませんでした。
採血をする為には尾びれを持った後に水面より高い位置にあるプールサイドに置かないと針を刺すのが難しいのですが、「ピック」は尾びれを持たせてくれてもプールサイドに置かせてくれませんでした。
尾びれを水面から少し高さを上げようとすると、力が入って水面より高くあげさせないように抵抗します。
これは困ったなと思い、何か良い方法はないかと考えていたところ、ある一つの方法を思いつきました。
それは、尾びれの下に何か敷いて、尾びれをプールサイドに置いてある感覚を「ピック」に体感してもらい、その状態でも嫌な事は何もないよというのを分かってもらおうというもの。
そこで登場したのが先ほどの板。
水面で「ピック」の尾びれを持っている状態で、「ピック」の尾びれの下にこの板をあててみました。
最初は少し力みがありましたが、何もないと分かるとスッと力が抜けました。
その瞬間
「よし、この方法でいける!!」と、私の中で確信が持てました。
そうなればあとはこんな感じでトレーニングを進めます。
水面で尾びれを持つ
↓
板をあてる
↓
力が抜ける
↓
尾びれの高さを少しあげる
↓
オッケー
この繰り返しで、あっという間に尾びれをプールサイドに置くことができました。