2016年08月07日
トリーター:北嶋

「しんかい2000」Q&A その 1

2016年7月「しんかい2000」公開整備2016年7月「しんかい2000」公開整備

しんかいファンのみなさま、お待たせしました!
「しんかい2000」運航チームOBのメンバー(※)が、みなさんが知りたいことに答えてくれました。
ここでいくつか紹介させていただきます。
これは、 7月 10日に開催した『「しんかい2000」公開整備』中にお客さまからいただいたアンケートに書かれていた質問です。


2016年 7月 公開整備のようす

メンバーによって答えが違うものもありますので、回答が複数あるものもあります。
しんかいファンも、しんかいファンでないという方も、きっと深海に潜った気分でわくわくすると思います。
もらった質問の数が多いので、何回かに分けて紹介します。
それでは、どうぞ。


・今までに一番乗船中にドキッとしたことは何ですか?
・「しんかい2000」でそうじゅうしている時にとても大変、危険だったことはありますか?
・「しんかい2000」に乗っていて、ピンチになったことはありますか?

・人工物を見たとき、捨て漁具に引っ掛かった時が一番ひやりとしました。
・人それぞれだと思いますが、「しんかい2000」富山湾の潜航で漁具に絡まったことでしょうか。


・有人船だと、無人とは絶対、これが違うというのは何ですか?

・例えば、沖縄トラフのような熱水噴出域は熱水の温度、吹き出している物質の成分等を有人潜水船で十分調査をおこなっているから、無人機で同じような現象の場所を見つけることが可能になります。
しかし、人類が経験したことのないような初めての発見は、絶対に無人機で見つけることはできません。
逆に、そこがどんな場所、どんな現象か判っているところでのサンプル採取や観測機器の設置は、わざわざ有人機で行く必要はなく無人機で十分です。


・はじめてしんかいに行ってびっくりしたことは、何ですか?

・海の中は、中層でも深層でも、生物に満ち溢れていることを見て、我々生物の起源はこの海からであることを確信しました。
・泥の海底ではスラスター(プロペラ)を回すと泥を巻き上げて視界が悪くなること。
・初めてではないが、駿河湾の水深 2,000mの海底の潮流が速かったこと。
・相模湾や駿河湾の海底は沖縄や小笠原の海底に比べて非常に視界が悪いこと。


・航行中に、海底で噴火などがあった時や装備に傷など破損した時は、どうするのですか?
・海底火山等まわりに接触したりとかありましたか?

・噴火や地震で出来る乱泥流に巻き込まれたらどうしようもありませんが、機器の故障では必ず浮く構造ですから心配はありません。壊れたら必ず落ちる飛行機より遥かに安全です。
・噴火や地震があった場合は速やかに上昇、浮上します。機器が破損した場合も同様です。


・今ある「しんかい2000」が再航行できるのでしょうか?

・不可能ではありませんが、最後の潜航が 2002年の 12月で、その時点から約 15年間部品を交換していません。先日、紹介したOリングなどは全数交換する必要があります。全機器を外し、ばらし整備するにはとてもたくさんの経費が掛かります。また、整備後に自動車の車検に当たる国土交通省の検査を受ける必要があり、それに受からなければ潜航はできません。したがって、あまり現実的ではありません。
・今の装備では潜航できません。耐圧殻の強度の確認、ほとんどの機器の新替えなどを行うことになると思うので、新しく作るのと同じくらいの費用が掛かると思われます。


・「しんかい2000」に乗った時どんな深海生物を見ましたか?新種を見つけましたか?

・どの潜航でもたくさんの生物を見ておりますが、どれが新種であったか?知りません。しかし、きっとたくさんあったと思います。
・「しんかい2000」で発見した新種(と思われる生物)は、通称「カッパクラゲ(ヤドリクラゲ類)」(平成 9年 5月、相模湾中層 500~ 1,400m)、クシクラゲ類(平成 9年 5月、相模湾中層 790m)、アカイカ類(平成 9年 5月、相模湾中層 450m)、サメハダホウヅキイカ類(平成 9年 6月、小笠原諸島周辺水曜海山中層 600~ 1,400m)。
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/1997/19970723/


その1はここまでにしましょう。

実際に「しんかい2000」を動かして、深海をたくさん見て来ているからこその回答ですね。
「しんかい2000」によって見つかった新種の生物はたくさんいますが、新種でなくても、海で生活している姿を見られたのが初めての生物がほとんどだったのではないでしょうか。
わたしも深海に行ってみたい!
近いうち、続きを紹介します。お楽しみに。



※「しんかい2000」運航チーム
現在えのすいで展示中の「しんかい2000」が海で活躍していた頃より、「しんかい2000」を整備し、動かして、運航していたチームです。パイロットをはじめ、整備士や支援母船「なつしま」より司令などで後方支援するメンバーで構成されています。えのすいでは2012年の展示開始から現在まで、年2回のペースで「しんかい2000」運航チームOBの協力のもと、公開整備を行っています。



2016年7月 公開整備のようす

深海Ⅱ-しんかい2000-

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