2016年08月10日
トリーター:伊藤

月光で命輝かすカニたち 3

フタバカクガニフタバカクガニ

きのうは本州内陸部で39℃を記録した猛暑日でしたが、久々に相模川の河口へ行ってみました。
相模川においては数年間にわたって、時にガッツリ、時にポツポツとカニの調査をしていたことがあり、その結果を報告しています。[ 研究発表 ]

1970年代を最後に、軟らかい泥質を湛えた干潟らしい干潟の環境を失っているといってよく、多摩川のようにあたり一面で小さなカニがダンスしていることは一切ないのです。それでも、よく探すと他ではなかなか見られない珍しい種が見つかります。環境省による「日本の重要湿地500」にも選ばれているのですよ。

フタバカクガニ
南西諸島のマングローブでは最も多い種の一つですが、相模湾では稀な種といえます。茶色い体は地味ですが、爪先のオレンジと眼の下の黒い稲妻模様から同定はしやすいです。
先日紹介したカクベンケイガニ以上の素早さと警戒心を持つ種です。捕まえようとしてあたふたしていると、もの凄い速さで岩の隙間をすり抜けながら逃げてしまいます。沖縄では、ヒルギの幹をらせん状に駆け上がる神業を披露されたこともあります。
今回、相模川で生息数の多い地点を見つけたので、少し採集して川魚のジャンプ水槽脇の小水槽に追加展示しました。カクベンケイガニ同様に展示内ではゆったりと警戒心を緩めて行動してくれるので、間近で観察するチャンスです。解説板がない隠れキャラ扱いですので、上記の特徴を踏まえて探してみてください。

相模川では他にも、大量のクロベンケイガニとケフサイソガニに混ざって、アリアケモドキやタイワンヒライソモドキといった珍種が見つかったりして、暑かったですが満足感のあるフィールドワークでした。

オカヤドカリの仲間
ついでに紹介します。イワガニ類どころかカニですらないので番外と言えるでしょうか。
本種も月光に導かれる産卵行動が知られています。南西諸島の生き物という印象が強いですが、近年ではナキオカヤドカリなど数種類が相模湾でも見つかっています(残念ながら相模川ではまだ見つけていません)。
先日、キッズ水槽に中くらいの個体を増量しました。今回のシリーズで紹介してきた種の中で唯一、採集ものではありません。そもそも本種は天然記念物ですので、採集禁止です。沖縄旅行に行かれるみなさん、持って来たら絶対だめですよ。貝殻をお土産にする時は中身に注意しましょう。

これまで紹介してきたカニ類は、どれも通好みのマニアックな種ばかりなので、生きた姿を見られる園館は少ないと思われます(ヒメアシハラガニの展示は残念ながら終わっています・・・今展示中のものは大小のアシハラガニです)。当館ならではの展示といえそうですので、ご来館の際は是非ご覧ください。

相模湾ゾーン

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