2016年08月11日
トリーター:北嶋

「しんかい2000」Q&A その 2

2016年7月「しんかい2000」公開整備2016年7月「しんかい2000」公開整備

「しんかい2000」運航チームOBのメンバー(※)による、しんかい2000や深海に関するQ&Aその 2です。
それでは、どうぞ。


・「しんかい2000」という名前ですが、実際は何mまで潜ったことがありますか?

・1981年に建造造船所の試験潜航で、紀伊半島沖の熊野灘で 2,008mに潜ったのが記録です。


・新種の深海生物ってどのくらいの頻度で発見されていたの?

・同じように見える生物でも、海域や深度が変わると持ち帰ってよく見ると新種である可能性が高いが、採取できなければ新種として登録できないので、何ともいえません。


・「しんかい」とはどのような所ですか?

・超高圧・太陽光が届かない・電波が届かない・低温等の世界です。生物学的には水深 200m以深が深海です。


・「しんかい」は「月」よりも探検した人が多いのですか?少ないのですか?

・月に行った人は、JAXAのページを見ると27人で、実際に月面に降り立った人は12人です。しんかい2000の潜航回数は 1,411回なので、遥かに深海に行った人の方が多いです。


・潜水を始めてから目標深度に着くまでの間、何をなさっていますか?(計器とにらめっことか)

・往路(下降)時は、乗船研究者と海底についてから調査のやり方を再度打ち合わせることが多いです。復路(上昇)は、乗船研究者が思った通りの潜航がおこなえ、ご機嫌ならパイロット向けの特別講義を聞かせてくれます。もしうまくいかなかった場合(乗船研究者が想定した現象が見つからなかった)は、ほとんど会話の無い辛い時間となってしまいます。


・6500とのちがいは?

・最大潜航深度は 3倍以上、マニピュレータは 2本、ペイロードと呼ばれる持って行けるまたは帰る観測機器やサンプルの重量も 2倍になっています。しんかい2000の完成が 1981年、しんかい6500が 1989年ですので、たった 8年間で日本の技術は飛躍的に進歩しました。


その 2はここまで。
深海に行った人数と月に行った人数についてお話がありましたが、よく深海と宇宙は比較されます。
どちらもまだまだ未知の部分が多くて、科学のロマンを感じる分野です。
確かに行った人数は深海の方が月に比べると多いですが、実際にこの目で見たことがある人数を比較すると、圧倒的に数が逆転します。
だって、みなさんも夜空を見上げれば月が見られますよね。望遠鏡を使えば、じっくり観察もできます。
深海は実際に潜らないと、この目で見ることができません。
わたしたちも飼育技術を磨いて、そんな、めったに見ることのできない深海生物の本物の姿を“えのすい”でみなさまにお見せできるように今後もがんばります!
Q&Aはその3に続きます。お楽しみに。




※「しんかい2000」運航チーム
現在“えのすい”で展示中の「しんかい2000」が海で活躍していた頃より、「しんかい2000」を整備し、動かして、運航していたチームです。パイロットをはじめ、整備士や支援母船「なつしま」より司令などで後方支援するメンバーで構成されています。“えのすい”では 2012年の展示開始から現在まで、年 2回のペースで「しんかい2000」運航チームOBの協力のもと、公開整備をおこなっています。



2016年 7月 公開整備のようす

深海Ⅱ-しんかい2000-

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