2016年08月29日
トリーター:岩崎

シイラが来た!

台風の行方が気になる週明けです。
8月もいよいよ大詰め、きょうから学校が始まった人も多いかもしれませんね。
夏休みはプールや海に出掛けましたか?
暑いので長い時間プールで泳いでいると、手や足がしわしわになってしまうことがあります。
これは浸透圧の関係で、淡水よりも塩分濃度が高い体の中に、周囲の水が浸み込んでくるために起こります。

一方、海で長時間泳いでもしわしわになることはほとんどなく、かわりに水の中にいるのに喉が渇いてくることがあります。
これも浸透圧の関係で、海水より塩分濃度が低い体の中から、周囲の海水に水分が浸み出してしまうために起こります。

海水魚は体の水分がどんどん抜けてしまうので、周囲の海水をたくさん飲んで、余分な塩分は鰓から捨てています。そして、濃い尿を少しだけ出して水分をなるべく外に出さないようにしています。

一方、川や池、湖に棲んでいる淡水魚は、体に水分がどんどん入って来るので、水はほとんど飲まずに、鰓から塩分を取り入れながら、薄い尿を大量に出して体の中の水分を減らします。
普通の海水魚や淡水魚は、淡水か海水かどちらでしか生活できませんが、アユやウナギなど川と海を行き来する魚は、この浸透圧の調整をどちらの環境にも合わせることができるので、淡水でも海水でも生きることができます。

水族館ではこの浸透圧の差を使って魚の病気を治療することがあります。
海水魚の体に取りつく寄生虫は、淡水に弱いので、寄生虫が付いてしまった場合、魚に影響が少ない短時間淡水に浸して寄生虫を落とします。
淡水浴という方法ですが、逆に淡水魚の体に取りつく寄生虫は海水に弱いので、魚に影響が少ない短時間海水浴をさせる場合があります。
実は、自然の中でもコイが海の近くで海水浴をしていたり、クサフグが川で淡水浴をしていたりすることが知られています。
どうやってそんな方法を知ったのでしょうか?
生物は本当に不思議です。
寄生虫が出やすい水槽や、寄生虫が付きやすい魚は、時々淡水浴や海水浴のほか、塩分濃度を調整して治療を行います。

きのうから相模湾大水槽にシイラを展示しました。
寄生虫に弱い魚なので、今回は担当トリーターが定置網から搬入後、塩分調整をしながら、コンディションを整えて展示につなげました。
短期間の展示になる可能性もありますが、大水槽を悠々と泳ぐシイラをぜひご覧ください。

※シイラの展示はお休みしています。

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