2018年05月25日
トリーター:山本

カツオノエボシの魅力その 1【体の構造】

みなさんは「カツオノエボシ」というクラゲをご存知でしょうか。よく海の危険生物として紹介され、刺されるとピリッとした痛み、腫れ、人によっては呼吸困難になってしまうほど危険なクラゲです。刺されたときの感覚から「電気クラゲ」なんて呼ばれることもあるようです。
このカツオノエボシが、5月の上旬辺りから南風が強く吹く日に神奈川県の沿岸部で漂着しており、“えのすい”のすぐ目の前にある片瀬海岸にもたくさん漂着しています。

さて、このカツオノエボシですが、みなさんは「毒が強くて危険」ということ以外に、このクラゲのことを詳しく知っているでしょうか? 私は全然知りませんでした・・・(笑)
そのため、今回の漂着をきっかけに、観察や勉強をしてみました! すると、危険な印象ばかりのカツオノエボシが、とっても魅力的な生き物に見えるようになったんです。
そこでみなさまに、私が調べたカツオノエボシについてのことを、何回かに分けてご紹介していこうと思います。クラゲファンの方にもそうでない方にも、カツオノエボシの魅力が少しでも伝われば嬉しいです! 専門用語や英単語も書きますので、気になった方はもっと深く調べてみてください!

今回はカツオノエボシの「体の構造」についてご紹介していきます。


カツオノエボシは、上の写真のように、透明な風船のような物から青い触手が垂れ下がっているという不思議な形をしています。
ごちゃごちゃしているように見えますが、構造は意外とシンプルです。わかりやすいように図を作成してみました!


カツオノエボシの体は、大きく分けて 4つに分かれています。① 気胞体(Pneumatophore)、② 栄養個虫(Gastrozooid)、③ 生殖個虫(Gonozooid)、④ 感触体(Dactylozooid)です。

順番に説明していきましょう。

① 気胞体
気胞体はいちばん上の餃子のような形をしている部分です。この気胞体の中には、一酸化炭素や窒素が主に入っているそうです。見ての通り、海で浮くためのものですが、気胞体をしぼめて一時的に沈むこともできるそうです。実際に観たことはありませんが、意外と器用なんですね・・・
この気胞体には、形が 2パターンあり、江の島に来るカツオノエボシは、すべて左に膨らんでいるタイプでした。


② 栄養個虫
栄養個虫は、餌を取り込んで消化し、体全体に栄養を送る役割をしています。打ちあがっていたカツオノエボシが魚を食べていたので、観察してみました。


栄養個虫の先端にある黄色い部分は口です。観察したカツオノエボシは、写真のように魚を口から丸のみにしてしまいました。口に入らない大きな魚は、口をペタッとくっつけて消化しながら栄養を吸収するようです。今バックヤードで飼育しているカツオノエボシは、アルテミアも食べてくれました。

③ 生殖個虫
カツオノエボシの青白くもしゃもしゃしている部分です。生殖個虫は、その名の通りこどもを作るための部分です。拡大写真はこちら↓


白くて丸いものは、生殖個虫が持つ「生殖体(gonophore)」と呼ばれるものです。ここを見ることで、オスかメスかが判断できます。

④ 感触体
いわゆる触手の部分です。ここで餌となる魚などを捕らえます。拡大すると、小さいつぶつぶが見えますね。これが刺胞です。この刺胞に毒針が入っています。図鑑によると、この感触体は、長さが 30メートルほどまで伸びるそうです。


①~ ④以外にも、生殖個虫( ③)が持つ触手「生殖感触体(gonopalpon)」や、生殖体のすぐ近くにある、少しだけ動くことができる部分「泳鐘(swimming bell)」、生殖体を保護する役割を持つ「保護葉(bract)」など、細かく見ると分かれているようです。もっと詳しく知りたい方は、今のキーワードから調べてみてください!

みなさん、カツオノエボシの構造はなんとなくお分かりいただけたでしょうか? 体の構造を知ることは、その生き物を詳しく知るための第一歩です。体の構造が分かったら、きっと前よりもカツオノエボシが魅力的な生き物に見えてくるはずです! えのすいでは、現在カツオノエボシを絶賛展示中ですので、この日誌を読んでくださった方は、ぜひ“えのすい”にいるカツオノエボシをじっくり観察してみてくださいね!!

次回は、カツオノエボシが海でどのように生活しているかについてご紹介したいと思っています。お楽しみに!

あ、どんなにカツオノエボシを好きになっても、決して素手では触らないでくださいね!(笑)

クラゲサイエンス

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