2018年06月09日
トリーター:伊藤

今週のおすすめ

テーマ水槽テーマ水槽

カエルたち
約 1年ぶりにテーマ水槽を担当しました。今回は「水の生き物なのに空気中でも活動する「○ョピちゃん的」実在の生き物ということで、筆頭はカエルです。
赤ちゃんの頃は魚のように水中生活(オタマジャクシ)、やがて陸や浅い水辺で暮らすという、お馴染みですがよく考えるとすごい特徴を持っています。
すべて神奈川県下の同じ場所から連れてきました。
「アマガエル」は、だいぶ減ってはいますが、それでも町中でいちばん見かけますし、江の島でも鳴き声を聞くことがあります。
田んぼのレイアウトにしたのですが、やっぱりというか、壁にくっ付いてしまいますね。本種の高い張り付き能力を間近で見られると、プラスにとらえましょう。
趣味で稲作というか、イネを観葉していまして、レイアウトのイネは、玄米から発芽させたり、親戚の農家から芽出しをもらったりしました。
「トウキョウダルマガエル」はかなり減っており、県南部では、生息地がもう数地点しかいないのではないでしょうか。
護岸が減少の主因と言われますが、自然下で見ているとなかなかよじ登る能力が高く、護岸水路を流されても、垂れ下がる草や、コンクリートの継ぎ目をつかんで器用に登ります。
登れなくて田んぼに戻れない、というよりは、冬眠場所が足りなくなったことが関係していると想像しています。


そして「ヌマガエル」。今回の場所では初めて見つけてしまいました。
しまいました、というのは、本種はまず外来種だからです。
国内外来種、つまりは日本の別の場所(本種の場合、西日本以西が本来の生息地)から入ってきて、住み着いてしまったものです。
在来種の上 2種とすみかの取り合いにならなければよいのですが。
種としては実に私好みの南国チックな見た目です。

ヨダレカケ
テーマ水槽その 2です。陸で活動するギンポの仲間です。
ムツゴロウやトビハゼが主に泥底で活動するのに対し、本種は岩場で活動します。
自然下で本種を観察したことは残念ながらまだないのですが、近い種のタマカエルウオならあります。
学生時代、小笠原諸島で磯釣りをした時に、たくさんいました。
岩上を歩くたびに素早く波間に跳び去るのですが、釣り竿を持ってじっとしていると、また足元まで登ってきます。
ほぼ垂直な岩でも、巧みに登ります。
当時はなぜか釣り!釣り!で、本種にあまり興味を持たなかったのが悔やまれます。
また行きたいですが、1週間以上、休まないと無理ですので定年後かな。


ヒメギス属の一種
こちらは川魚のジャンプ水槽わきの小水槽に登場です。
初めて飼育する生き物であり、1週間ほどバックヤードでようす見していたのですが、いけそうなので展示しました。
黒っぽい色をした小さなキリギリスで、展示個体はまだ幼虫です。おそらく「ヒメギス」だと思っています。
湿り気のある湿地や、河川敷の草上に見られます。意外と住宅街にも見られる種ですが、警戒心が強く、逃げ足もはやいため、間近で見る機会は少ない昆虫です。
「虫の腹」が苦手でなければ、ぜひ近くでご覧いただき、芸術的な体のつくりを堪能してみてください。


コツメカワウソ
隠れ“ニホンカワウソ”ファンの私ですが、情けなくも自身の担当業務に追われ気味で、いまだにじっくりと見れていません。


対馬のカワウソについて、ユーラシアカワウソであり、雄2頭、雌1頭がいるらしいと、環境省から発表されました。
そういえば対馬にも 20年ほど前にいったことがあります。
ユーラシア大陸に最も近いため「何がいてもおかしくない」ワクワク感がありました。生物の調査はけっこう行われているようですが、私の印象では島の大部分が山!樹海!断崖!という感じなので、未踏査の場所は多かったのではないでしょうか。
カワウソの現在の分布が、きれいに日本の国境で途絶えているのがいろいろと考えさせられます(私個人は高知県や栃木県など国内に生き残っていて欲しいし、最後の目撃から 50年経ってないのになぁ、と思っています)。
朝鮮半島と九州(今は対馬にいるわけですが)、樺太と北海道、隣接したここらはかつて陸続きであったはずで、共通した環境と生物相を持っていたはずです。
その中でカワウソばかりが、ということは、環境に対する接し方の違いが、カワウソの生活史を分断する「何か」を起こしてしまったのかと思わずにはおれません。
近い仲間のイタチやテンは減りつつもまだ棲めて、アメリカミンクなんかも帰化できてしまうわけなのですが。

最後に湿っぽくなりました。水陸両用「ズゴッ○的」珍生物たちにぜひ、会いに来てください。

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