2019年10月29日
トリーター:八巻

ミクロな魅力

小型甲殻類には面白い形をした生き物が数多くいます。ヨコエビやカイアシは聞いたことある方がいるかもしれません。先日ハオリムシの予備水槽を観察していたら、タナイスを発見しました。タナイスといわれてパッと姿が思い浮かぶ方はあまりいないかと思います。
私は、タナイスは小型甲殻類の中でも、屈指のかわいい姿だと思っていて、いい機会ですので紹介したいと思います。


写真1 タナイス背面


写真2 タナイス側面

タナイスは写真のような細長いエビ様の生き物で、体長は数ミリしかありません。この種は全体的に丸っこい部分が多く、そのシルエットもとてもかわいいのですが、特にハサミ脚がかわいいです。写真1では左側が頭で、触覚の付け根に目があります。その左右にあるモグラの手のようなものがハサミ脚です。写真2では上が頭になります。

種まで特定はできませんが、こちらは鹿児島湾のハオリムシ生息域に優占する種と思われ、調査や採集の時によく目にします。
ちなみにタナイスはダンゴムシなどと同じフクロエビ類と呼ばれる甲殻類の一群にまとめられます。名前の通り、多くのフクロエビ類はメスのお腹側に卵を保育する袋のような構造をもち、卵はそこで育ち、子どもになってからうまれます。タナイスも基本的には同様のようですが、中には、メスのお腹ではなく繭を作り、その中で卵が育つ種もいるようです。


写真3 タナイスの巣と卵

この種は見た事はあったのですが、どんな生態なのか、まるで知りませんでした。水槽で観察できると多くのことが分かります。
多くのタナイスは自ら棲管を作り、その中で生活するようで、私の見つけたタナイスも水槽のガラス面に巣(写真3黄色〇)を作っていました。そして、巣の中に卵の入った繭(写真3赤〇)が3つ見えますので、繭を作るタイプのようです。巣を作り保育する姿はなんとも健気です。

このような小さな生き物を展示するのは難しいのですが、水槽はいつで新たな発見に満ちています。もしかしたら展示水槽にも、意外なところに小さな発見が待っているかもしれません。そんな水槽の見方も面白いです。

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