抱卵するタイワンホウキガニみなさん こんにちは、八巻です。
休館が続いていますが、生き物たちも、私たちトリーターも、毎日元気に頑張っています!!
先日、小形トリーターが可愛いペンギンのひな鳥をご紹介しましたが、今はまさにベビーラッシュ、深海lでもタイワンホウキガニ、ヒラアシクモガニの赤ちゃんが生まれています!
カニの赤ちゃんはちょっとかわった姿をしています。
例えば、私たちほ乳類の赤ちゃんはお母さんのおなかから産まれ、ペンギンなど鳥類は母鳥が産んだ卵から生まれます。生まれ方こそ違うものの、どちらも親と赤ちゃんの姿形は基本的に同じです。
一方、甲殻類(エビカニのなかま)の赤ちゃんは、“幼生”とよび、多くの種類が親とは全く異なる形をしています。
しかも、成長段階によって少しずつ形が変わる“変態”という段階を何度か経て、親と同じ姿になっていくのです。
カニのなかまは自分のお腹で卵を保護し、幼生が生まれてくるまでかかえて過ごします(写真上 抱卵するタイワンホウキガニ)。
そして、いよいよ生まれると、幼生は水中へ放たれます。
大きさは種類によって異なり、例えばタイワンホウキガニは 1mmほど、
タイワンホウキガニのゾエア
ヒラアシクモガニは 3mmほどです。
ヒラアシクモガニのゾエア
この生まれたばかりの最初の段階の幼生は“ゾエア”と呼ばれます。
前後に2本の角が伸びた頭胸部には大きな目があり、しっぽのように見える部分は腹部です。
図1 ゾエアと親ガニ
ゾエアと親ガニの体を模式図で比べてみました(図1、同じ色は相当する部位)。
ずいぶんと違うことが分かります。
ゾエアは水中を漂う小型プランクトンですが、胸部の付属肢を使って泳ぐことができます(図1 の紫色の部分)。
私はずっとこの部分がカニでいう脚にあたる部分(図1 の緑色の部分)と思っていましたが、顎の部分に近いようです。
形だけでなく、各部の大きさや働きもずいぶんと違い、面白いですね!
このようにかわった姿をしたカニの赤ちゃんですが、実は飼育するのがとても難しいのです。
上でも述べたように本来はとても広い海を漂うプランクトンで、海にたくさんいるもっと小さなプランクトンを食べて大きくなります。それを飼育下で再現するのはとても難しいのです。
飼育水を清潔に保つことや餌の量をコントロールすること、そもそもどんな餌を食べるのかということ。より良い飼育法を探るため、日々試行錯誤を繰り返しています。
一般にカニの幼生は、今回ご紹介したゾエアの後、メガロパという形の幼生を経て、親と同じ姿の稚ガニになります。
まだまだ先は長いですが、頑張って飼育していきたいと思います!
タイワンホウキガニの飼育は「北里大学海洋生命科学部と新江ノ島水族館との学術協定」に関わる研究の一環です。