2020年04月29日
トリーター:伊藤

在宅研究

クリーナーフィッシュとしての面はあまり知られていないゴンズイクリーナーフィッシュとしての面はあまり知られていないゴンズイ

ちょっと堅い話で恐縮です。

世間では人々の接触を抑えるべく、在宅勤務が一気にすすんでいます。

私のいる部署は、生き物を相手にするのが主な仕事ですので、なかなか難しいです。3密を避けつつ、万が一体調不良者が出た時に備えて、日々の仕事はごく少人数の出勤者であたっています。単独で大きな水槽を洗ったり、ぐるぐる餌を与えて回ったりと、日々5000歩増しで過ごしています。

さて在宅勤務。どうやるのがベターかと、現場系の多くの業種が悩んで、工夫をしている真っ最中です。私たち博物館業界でぱっと思いつくものとしては、解説文章、報告書、各種デザインなどが、遠隔で、非同期通信で行える作業でしょうか。

あとは研究です。私もこの事態で、普段よりは、やるようになっています。フィールドワークではありません。過去に取り貯めた(いや、正直に…口頭発表しただけで脇に積んでしまった)写真やら数値のデータ、標本たち。これらを在宅にて、報告書や論文のかたちにする作業です。

ここからは誤解を恐れず、私見ということで、データが豊富な方が、実は論文にし易いです。パソコンやスマホのある今は、手計算とか漢字や単語を辞書でひいたりする必要がないですから。
今、手元にあるデータのいくつかは、新しい情報を含むものの、量や質が断片的な「カケラデータ」。新たなデータを得るのが難しい場合、カケラとカケラをパズルのように組み合わせるか、組み合わない部分を埋めるボンドのようなデータを入手する必要があるので、意外と手間取ります。またデータを取ってから年を経ると、それに対するモチベーションが失われていたり、同様のデータをもとにした後発の研究が既に発表されていたりします。
それを見事にいい当てた「古くなるとデータも腐る」という名言もあります。この言葉を頭の片隅に置き、当時一緒にデータを取ってくれた協働者に報いるためにも、ちょっとガッツを見せねばと思っています。

何だか抽象的な話になり恐縮ですが、今、手掛ける論文がトントンいったとして、世に出るのはだいぶ先です。その時に「あの緊急時によくまとめたなぁ」としみじみ喜べると良いな、と思っている今日この頃です。

RSS