2020年07月21日
トリーター:山本

カツオノエボシ(Physalia physalis)の飼育方法

カツオノエボシカツオノエボシ

今年も、神奈川ではカツオノエボシのシーズンが始まりました。
ニュースでもご覧になった方は多いのではないでしょうか。
ここ数年で知名度が一気に上がってきたように感じます。

ざっと説明すると、カツオノエボシは、ヒドロ虫綱管クラゲ目に属するクラゲの仲間です(※虫の仲間ではありませんよ!)。
一つの受精卵から成長し、役割の異なる「個虫」が連なって「群体」と呼ばれる状態(他のクラゲでいうところのポリプ的な状態)になったものが、我々のよく目にしているカツオノエボシです。

“えのすい”でも 6月から展示を始め、早一か月が経過しました。
みなさま、もうご覧いただけましたか?
今年は連続展示日数をいつもよりも長くすることが目標です。
3か月くらい一日も欠かさず展示できたらいいなあ。
もちろん通年展示ができることを最終目標にしていますが、なかなか人工繁殖もうまく行かず、一つの群体をなるべく長期間生かすことに全力をささげる毎日です。

さて、今回の日誌では、“えのすい”でおこなっている「カツオノエボシの飼育方法」を紹介しようと思います。
実は、すでに、大先輩のKトリーターがカツオノエボシの飼育方法を紹介しています。
私もこの方法を参考にしながら、やっと安定して2週間、長い時で一か月以上飼育できるようになりました。そのため、今回はこれまでの情報をざっとまとめていきますので、もし砂浜でカツオノエボシを見つけた時は、素手で触らずにお玉などですくって、お家で飼育チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

カツオノエボシ (Physalia physalis) の飼育方法
[必要なもの]
・飼育容器(なるべく透明で大きいもの)
・エアーポンプと空気量調整用のコック
・ガラス管とエアチューブ
・食品用ラップフィルム
・湘南名物の生シラス
・綺麗な海水



コツは「餌をちゃんと食べさせること」と「海水をきれいに保つこと」です。
当たり前のことなのですが、意外とこれが難しい・・・ 。
“えのすい”で行っている飼育のスケジュールはこんな感じです。

1, 朝: 全ての飼育水を、温度を同じにした綺麗な水に交換。
そのあと解凍した生シラスを食べるだけ(大体 2~ 3匹)与える。

2, 昼: 朝と同じく、すべての水を交換。
もし食べるようなら生シラスを与える。

3, 夕: 同じく全ての水を交換。
ちなみに飼育水の温度は20℃前後です。
エサのあげ方にも少しコツがあって、食いが悪い時にはシラスをちょっとだけ震わせて、生きている時の動きを再現すると取り込んでくれたりします。


さて、上だけ見ると、意外と簡単に飼えるような気がしてくるかも知れませんが、やっぱり難しいところもあります。
カツオノエボシは、一度でも調子を崩してしまうと、復活が難しいのです。
一度でも水替えを忘れてしまった・・・ それだけで、すごく元気だったのに調子を崩して、あれよあれよと溶けてしまう・・・ のです。
もちろん他のクラゲで気を抜いているわけではないですが、特に「気が抜けない」飼育です。毎朝、夜のうちに溶けちゃってないか、ヒヤヒヤしながら出勤しています。

飼育しながらじっくり観察していると、「あ、以外と動くんだー」とか、「やっぱ綺麗だなー」とか、「魚をそうやって食べるんだー」とか、いろいろ面白いことが分かると思います。
先ほどきれいな写真が撮れましたので、見てください!


揺らめく触手~


青と黄色の組み合わせって本当に綺麗。
ぜひ、実物を間近で見てみてください。お家ではちょっと・・・ という方は、“えのすい”のクラゲサイエンスにお越しください。私たちも、一日でも長くみなさまに見ていただけるように頑張ります。

「超危険生物」として有名なカツオノエボシですが、正しい知識を持って接すれば、こんなに「魅力いっぱい」な生き物もなかなかいないよな~と思います。
もしカツオノエボシを見つけた時は、一旦落ち着いて、ちゃんと正しい距離を保てば、きっと面白いことをたくさん教えてくれると思いますよ。

関連日誌
2016/10/29 カツオノエボシを飼育してみる

クラゲサイエンス

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