2020年10月01日
トリーター:八巻

タコの魅力。ツノモチダコの謎の?行動

こんにちは、八巻です。今日はツノモチダコのお話です。
その前にタコという生き物の魅力について少しご紹介させてください。

私は水族館で働くようになってから、タコの担当をしたことは一度ではなく、タコには多少の縁があるようです。
見れば見るほど、また飼えば飼うほど面白い生き物だなぁと思わされます。
信じられないかもしれませんが、タコやイカのなかまは大きく分ければ軟体動物で、二枚貝や巻貝などと同じグループに分類される動物です。
タコは全身が柔らかく、それこそ“殻”は全くないわけですが、イカは軟甲や甲と呼ばれる硬い部分があり、“殻”のある軟体動物と同じグループとイメージがしやすいかもしれません。
とはいえ、タコもイカも頭足類という、軟体動物の中でもでも進化的な一群に分類され、活発に動き回る運動能力は他の軟体動物から一線を画します。
タコが全身の筋肉を使い、体の形を変えて擬態したり、滑るように移動する姿、またイカの常に変化しつつも透明感のある体色や、ろうと(よく口のように描かれる部分、水を吐き出して推進力を得る)を使って器用にに泳ぐ姿などは、いくら見ていて飽きないものです。
頭足類とはその名の通り、頭を上、胴を下に向けると、頭から直接足が生えているという驚きの体制を持ったグループです(図 1)。


図 1 タコの体制

面白いのはその体制だけでなく、印象的なあの“眼”です。
いわゆるレンズ眼で、私たち脊椎動物とほぼ同じ仕組みで光を受容しているわけです。
脊椎動物と無脊椎動物、動物の中でもその体制や進化過程が大きく異なる二群の生物が、結果的にそれぞれほぼ同じ構造の光受容器を持つに至った。このような起源が違うにもかかわらず同じ機能を持つようになったことを収斂と呼びますが、このような奇跡的な収斂が起こりうる生物の多様性と進化は知れば知るほど本当に不思議で興味深く、また魅力的です。
さて、そんなタコの仲間ですが、雌雄を見分けるという基本的なところが、結構難しいのです。
確実に見分ける方法は、右第 3腕が交接腕か否かです。
雄は右第 3腕の先端が変形していて、吸盤がなく、精莢(せいきょう)と呼ばれる精子が入ったふくろを雌に渡すための構造になっています。


ツノモチダコの交接腕の先端

現在 相模湾ゾーン「沿岸水槽」で展示中の 2匹のツノモチダコについて、右第 3腕を確かめて全て雄であると思っていました。
しかし、先日から 2匹のツノモチダコがどう見てもケンカではなく、2匹が一緒にいる姿を観察できるようになりました。



かれこれ 1週間以上続いていて、どうも交接をしているように見えます。
そこで専門家の方に聞いてみたところ、専門家の方が見ても交接腕で雌雄の判別は難しいとのことでした。
雌雄の判断が間違っているのはトリーターとしては少し残念ですが(笑)、間違っていてくれれば交接をしているということになり、卵を産むかもしれません。間違っていてくれることを祈りつつ、このまま観察を続け、ようすを見守りたいと思います。

やはりタコは観察すればするほどわからないことが出てきて本当に魅力的ですね!

相模湾ゾーン

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