2020年10月03日
トリーター:加登岡

悩む日々

魚類担当になって半年が経ちました。
分からないことだらけでしたがいろいろと経験を積んで少し成長している・・・はずです。
相模湾大水槽でおこなっている「えのすいトリーターとさかなたちのふれあいタイム」でダイバーとしてデビューできました。
先輩方と比べると優雅さもまだまだありませんが、今できる精一杯で行なっています。


さて、日々の悩みとしては魚の治療が大変だということです。
イルカやアシカを担当していた時は、採血をしたり、体温を測ったりと毎日の健康管理をして、動物のチェックをしていました。また、獣医さんもいますし、データを見ながら何が悪いのかを調べて、それにあった治療をおこなっていました。
では魚はというと採血は難しいですし、体温は変温動物なので、水温とほとんど同じです。
(採血は大型のものならできるかもしれません。学生時代にサメの採血は経験があります。)
魚医はいないので、飼育員が全て自分たちで調べ、治療方法を考えなければなりません。
データはなかなか取れないので、体表に何かついていないか、傷はないか、呼吸はおかしくないかなど、見た目や行動から判断をしていきます。
また、魚は一度体調を崩すとあっという間に致命的になってしまうことも多いです。
先輩方にいろいろと聞きながら治療を実施して、なんと回復させてあげたいと思ってはいるものの、うまくいかないことの方が多く悩む日々です。

ただ、そんな時でも治療ができた魚を見ると励まされます。その一例を紹介します。
私が魚類担当になってすぐのこと、バックヤードにいたシモフリタナバタウオの尾鰭がみるみる溶けていきました。


そして餌も食べなくなり、日に日に尾鰭は棘条だけになってしまいました(黄色部分は薬を塗った所です)。


知識も経験も何もないのでどうすることもできない状態でしたが、先輩に相談して薬を患部に塗ったり、強制給餌を行なって体力の低下を防ぎました。
先輩たちのアドバイスは的確で知識・経験全てから治療法を出してくれました。

治療を開始するとちょっとずつ、でも確実に回復していきました。


写真は治療開始してから1か月のものです。剥げていた尾柄に鱗がつき、棘条の部分にも少し鰭がついてきました。
そしてさらにもう1か月たつと尾鰭の形が戻ってきました。


そして現在はというと、水槽で展示をしています。
一時はもうダメかと思った時もありましたが、無事回復してくれました。そのシモフリタナバタウオを見ると今でも励まされます。

このシモフリタナバタウオは太平洋のチンアナゴがいる水槽にいます。
岩陰に隠れるのが好きで時々出てきますので探してみてください。


悩みがなくなる日はないでしょうが、今できることを日々しています。

太平洋

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