2021年12月06日
トリーター:石川

「ウタ」の鼻笛

フンボルトペンギン「ウタ」フンボルトペンギン「ウタ」

2009年の4月にペンギンのくしゃみについてトリーター日誌を書きました。
2009/04/26 ペンギンのくしゃみ!?
ペンギンなどの海鳥は海水を多く摂取するため、人間のように腎臓だけでは塩分を排出しきれず、別に塩分を排出する器官「塩類腺」があります。
「ウミガメの涙」も同じような器官になります。
ペンギンでは目の上あたりにあって、そこで濾(こ)された塩分を鼻から排出するのです。このシステムのおかげで海水を飲んでも大丈夫なのです。

水中から上がって最初に顔を振って鼻水を飛ばしますが、これが濾された塩分濃縮液なのです。
目の前にペンギンが上陸したその一呼吸後、プルプルと顔を振られると鼻水しぶきが眼鏡に着きます。
それが乾くと塩跡となって乾くのは眼鏡をかけているペンギン担当者ではよくあることと思います。
この距離感でペンギンの鼻水しぶきを受けられるのも飼育担当者冥利に尽きることなのかもしれません。

さて話は2009年4月のトリーター日誌に戻ります。
2009/04/26 ペンギンのくしゃみ!?] この日誌で私は鼻水を出す際に「ツッピッ!」って音が出る時もあるとお伝えしていたのですが、実は「ウタ」(メス:タグ青緑)だけのようなのです。
当時は私もあまり気にせず「音が出ることもあるんだ」と思っていたのですが、他の個体では聞いたことはなくて「ウタ」だけがこの音を発しているのです。
他のペンギンでも「プッスッ」的な音が聞こえることはありますが「ウタ」のように音が出るペンギンはいません。
きっと「ウタ」は生まれながらに鼻腔内のどこか内部が狭くなっているところがあるのかもしれません。

そのことで勢いよく塩類腺から塩分を飛ばす際に、毎回「ツッピッ」って鼻笛がなってしまうようなのです。私たちも鼻がつまっているときに鼻をかむと「ピッー」なんて変な音がでてしまうことがありますよね。

今では「ウタ」を見ていなくても、ペンギン舎の中にいれば、「ウタ」が鼻水を飛ばしたときがわかります。
先日、ペンギンミニライブでマイクの前でちょうど「ウタ」が「ツッピッ」って鳴らしたので、思わずお客さまへ「聞こえました?」ってお声がけしてみたんですけど・・・一瞬のことで、なおかつ「もう一回やって」っていってもやってくれないので、お客さまも「????」なようでした。
長く泳いでいた後では聞ける確率が高いのですが、「ウタ」が塩類腺をつかっているときに必ず音が出るとしても、泳いでいなければ 2時間以上聞けないこともある・・・そのくらいの頻度でつかっているようです。

「ウタの鼻笛」いつかお聞かせしたいです。

ペンギン・アザラシ

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