2022年10月21日
トリーター:西川

ヤマビルの採集と飼育

ヤマビルヤマビル

テーマ水槽では、[~ヴァンパイアのハロウィン物語~]と題して、ヴァンパイアに似た特徴を持つ生物を展示しています。ベタやイースト菌(Saccharomyces cerevisiae)など全 8種類を展示中ですが、今回はその中からヤマビルにスポットライトを当てての紹介です。

ヤマビルはヴァンパイアの「吸血」する特徴に当てはめて展示しました。
山や沢に行くといつの間にか体についているときがあるので、見たことがある方は多そうですね。大きさは 1~ 2cmほどで、背中に 3本の縦線が走っているのが特徴です。口と体の後方にある吸盤を使い、イモムシのように体を伸縮させて地面や木の上を移動します。驚くべきはその移動速度で、1分で 1m移動するとされています。これは、30秒もあれば地面から靴下の中まで行くことができる速さで、靴の上にヤマビルが乗ってすぐに気付くことができないと、次に気付けるタイミングはヤマビルが血を吸い終わった後です。
ヤマビルは血を吸うときにヒルジンという血が固まるのを防ぐ物質を出すので、血を吸われた後もなかなか血が止まってくれません。だから靴下が赤く染まってしまうんですね。ただ、傷口はとても小さく、1匹に吸血されただけでは、それによって貧血の症状を起こすことはないのでご安心ください。

ここまでヤマビルの特徴について述べてきましたが、ここからは実体験に基づいたお話になります。展示中のヤマビルは、購入したものではなく、自身で採集したものです。ヤマビルは動物が出す二酸化炭素や体温に寄ってくるので、ヤマビルをおびき出すために半袖短パンで自らヤマビルが居そうな場所に行き、できるだけ大きく呼吸をしました。事前情報として二酸化炭素を感じるのは 1.5ⅿ以内だということを知っていたので、その場にしゃがんでヤマビルが寄ってくるのを待ちます。すると、周囲のヤマビルが一気に口を上に持ち上げてにょきにょき動き始めました。この光景は、さすがに鳥肌ものでした・・・
絶対に血を吸われたくない私は、10秒に 1匹のペースで靴に登ってくるヤマビルを、それに負けないスピードで必死に採集ケースへ捕まえていきます。しかし最後は、全方位から登ってくるヤマビルの勢いに追いつかなくなり、つま先立ちになっていました。つま先立ちの効果もあり、最後まで血は吸われませんでした。もう意地です。
そうして連れてきたヤマビルは、私の血を求めて寄ってきているので、みんな空腹です。
ヤマビルは一度血を吸うと 5~ 10か月は生存できるようですが、餌をあげましょうということで、嫌々ですがヤマビルのために血を捧げることにしました。

吸い始め吸い始め

はい。こんな感じです。
画像の中心にいるヤマビルの右側が口で、すでに血を吸い始めています。じーっと見ているとチクっとした若干の痛みがありますが、他の作業をしていると付着していることすら感じません。

吸い終わり吸い終わり

そして吸い終わるとこんなにパンパンに膨れます。約 40分間吸血されたあと、ヤマビルが口を外し、ポロっと落ちていきました。吸われた血はだいたい 1ml、その後に流れた血が 1mlで、合計 2mlの血をヤマビルに捧げました。
このトリーター日誌を見てヤマビルに血を吸われたいと思った方、ヤマビルはシカやカエルの血を普段から吸っているそうで、感染症のリスクは保証できませんので、自身の責任のもとでお願いいたします。ちなみに、吸われた痕はこんな感じです。

吸血の痕吸血の痕

この痕は 1か月経過するとだんだんと見えなくなってきました。
強い痛みはありませんでしたが、もうやりたくないなというのが正直な感想です。

このヤマビルを展示しているテーマ水槽の展示期間は 10月末までです。
山や沢に行かずに安全に見られるチャンスはあまりないと思いますので、ヴァンパイアをイメージしながらぜひご覧ください。

テーマ水槽

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