2022年10月19日
トリーター:今井

「世界一黒い水槽」のメンテナンス

深海Ⅱの特別企画展「江の島沖の大陸斜面」水槽深海Ⅱの特別企画展「江の島沖の大陸斜面」水槽

深海Ⅱの特別企画展「江の島沖の大陸斜面」水槽では、深海をイメージした漆黒の闇間を演出するために、一般的な水槽とは異なる素材を背景板に使っています。

例えるなら、プロのカメラマンが使用する暗幕のようなものです。
もともと深海生物の展示水槽は、照明が弱いためにコケ類に悩まされることは無いのですが、従来の塩ビ板ですと月に 1回くらい水垢落とし等のメンテナンスをしないと背景板が曇りガラスのように見えて目立ってしまいます。

ところが今回の素材では、柔らかいブラシで、撫で払うだけで表面の曇りの層が取れて、黒さが復活してくれるので非常にメンテナンスが楽になりました。
実は、この素材の使用にあたっては、事前に別の水槽で密かにテストをしていました。

深海Ⅰの比較水槽(下段)深海Ⅰの比較水槽(下段)

深海Ⅰの比較水槽(下段)です。
わずか 15㎝以下の奥行きにても、塩ビ版とは異なる深みのある黒を表現できました。こちらは、生物が飼育されていないため、ほぼノーメンテナンスです。
金魚などの飼育では、エアーレーションだけの容器と、表面積の大きな人工水草などを放り込んだ容器とでは、水の透明度が違ってくることがあります。
当館では、仔魚餌料に利用するシオミズツボワムシの容器にロックウールを吊るして水の透明度を保っていますが、これも大きな表面積に微生物が棲み付いたり、素材に浮遊物が絡み付いたりして、水が浄化されているようです。

今回の素材は非常に大きな表面積を持っているので、水流によって壁面での水質浄化にも一役買っているみたいです。
昨今では、観賞魚飼育システムが目覚ましい発展を遂げて、魚類の飼育が簡単にできるようになり、また水族館などでもそういった商品に大変重宝させていただいておりますが、こういったものも普及していくと面白いと思います。

ちなみに、当館の歴代館長の廣崎氏は、観賞魚濾過システムの基本となっている底面濾過を開発した第一人者です。

底面濾過器底面濾過器

現役!底面濾過器・・・前面のスロープや、集水管のカーブなどなど、実に丁寧なつくりです。




本事業は、船の科学館「海の学びミュージアムサポート」の支援を受けて実施します。

深海Ⅱ-しんかい2000-

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