2022年12月09日
トリーター:山本

ゴマフウセンクラゲモドキ

“えのすい”の目の前に広がる相模湾や、そのお隣の駿河湾では、秋から冬にかけて普段沿岸で見られないような珍しい外洋性のクラゲたちが採集できることがあります。
寒いのはとても嫌ですが、当たればたくさんの種類のクラゲを見ることができるため、そういう意味では毎年楽しみな時期なのです。
先週そんな珍しいクラゲたちを求めて、静岡県まで足を運び採集をしてきました。
オビクラゲやシダレザクラクラゲなど、普段なかなかお目にかかれないようなクラゲたちが採れ、クラゲサイエンスでは早速順番に展示しています。
その中で、実は“えのすい”で初めて展示する「ゴマフウセンクラゲモドキ」というクラゲがいるんです。
とても面白いクラゲ・・・なのですが、とにかく小さい( 3㎜くらい)!見逃してほしくないので、日誌でも紹介させてください。

和名:ゴマフウセンクラゲモドキ
学名:Haeckelia bimaculata
分類:有櫛動物門 有触手綱 フウセンクラゲ目 フウセンクラゲモドキ科
ゴマフウセンクラゲモドキは、カブトクラゲやウリクラゲなどと同じ所謂「クシクラゲ」と呼ばれるグループに属します。
サイズは最大でも 5㎜程度と小さいですが、体に赤い色素班があることでほかの種とは簡単に見分けることができます。
記載されたのは 1989年。地中海やカリフォルニア沖でも見つかっており、分布はかなり広いようです。クシクラゲ類は一般的に刺胞を持ちませんが、本種は他の刺胞動物(クラゲ)を食べ、その刺胞を再利用するという変わった生き方をします。
これを「盗刺胞」といい、アオミノウミウシなどミノウミウシ類がおこなうことが有名です。観察していると、本種は「ニチリンクラゲ」というクラゲをよく食べ利用しているようです。

ニチリンクラゲはこんなクラゲ。
本当に・・・驚くほどよく食べます。クラゲを仕分けている際、小さいから大丈夫だろうと、両種を同じ容器に入れていたら、あっという間に食べられてしまいました・・・。

だって見てください。こんなに体格差があるんですよ。ニチリンクラゲのほうが圧倒的に大きいじゃないですか。

ガブリ。体格差なんて関係ありません。口を大きく広げて食らいつきます。

触手をちぎってもぐもぐするようす。自分よりも大きいニチリンクラゲをまるまる一匹、あっという間にたいらげてしまいました。
なかなか展示の中で捕食のようすを見ていただくことも難しいので、動画でぜひご覧ください。


こんな㎜単位の小さいクラゲ同士でも「食う - 食われる」の戦いが繰り広げられているのですね。こういうクラゲ同士の相性を知っておくことは採集の時にとても大切です。ニチリンクラゲに近い仲間のクラゲも食べそうなので、次に採集できた時は、現地で持ち帰りの容器をしっかり分けようと思います。

実は本種は去年も採れていたのですが、飼育が難しく、展示には至りませんでした。
一年越しの思いが叶ってようやく展示できたクラゲですので、ぜひご覧ください!

クラゲサイエンス

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