2023年04月15日
トリーター:山本

春のエイレネ

“えのすい”のクラゲ担当でおこなっている(ほぼ)毎日クラゲ採集。
私にとって、本日の採集結果は衝撃的でした。なんと、毎年初夏~晩秋にかけて出現する「エイレネクラゲ」が採れたのです。

過去 5年間で、エイレネクラゲの出始めとその日の水温は、2018年は 6月9日( 25.7℃)、2019年は 5月31日( 24.3℃)、2020年は 6月8日(データなし)、2021年は 5月28日( 19.7℃)、2022年は 5月12日( 18.7℃)です。
そして 2023年が 4月15日( 16.9℃)・・・! はやい。めちゃめちゃはやいです。きょう採れたときは目を疑いました。

クラゲたちの出現には、さまざまな要因(気温・水温・塩分・海流・潮汐・時間・風速・風向などなどなど・・・)が関係しており、出現時期の変化に対して「これが理由だ!」と決めるのはとても難しいことなのです。
が、考えないことにはなにも始まりません! とりあえずポリプからクラゲが遊離する際に重要な要因である「水温」に着目して、少しだけ考えてみましょう。
過去にエイレネクラゲが出現しはじめた時期の水温を見てみると、大体 20℃前後を越えたあたりで出現していました。 2月後半~ 3月前半は水温が 12℃前後だったのに対して、ここ数日は 15℃~ 19.0℃あたりをうろうろしています。
特に、3月23日の採集時の水温は 19.8℃(気温は 23.6℃)とかなり暖かかったです。

実は今、クラゲサイエンスで展示中のカツオノエボシも、いつもははやくて 4月後半の大型連休あたりで採集できていたのですが、今年は 4月10日。かつてない速さです。カツオノエボシが“えのすい”の近くにやってくる一番の原因は風向きで、南向きの風(暖かい風)が連続して吹くとやってくることが多いのですが、今年はそのタイミングがとても速かったように思えます。
私たちが普段採集に行っている江の島内の漁港は、それなりに閉鎖的で水深も浅いため、現場の水温は気温にかなり影響されます。つまり、寒い日は水温が下がりやすく、暖かい日は水温が上がりやすい環境です。
今年は天気が良く、風向き的にも恵まれて、暖かい日が多かった。
そのため、水温が上がり、エイレネクラゲが普段よりも早く出現した・・・??

なんかそれっぽいことを言ってみましたが、これまで普通に 4月でも出現していたのを私たちが見逃しており、今年偶然採集できただけという可能性も十分にあります。
ここまで考えても、結局のところ分かることはほとんどありません。今後もデータを積み重ねて、より精度の高い考察をしていく必要があります。

とりあえず、これまでの認識では「エイレネが出たら夏の始まり!」という感じだったのですが、今後認識を改めなければならないようです・・・。 江の島のクラゲを完全把握するために! 今後も採集を続けます!

クラゲサイエンス

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